衆議院-法務委員会 2004年(平成16年)05月28日




「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律案」に対する質疑

○本多委員

 民主党の本多平直でございます。 四月に北関東の比例で繰り上げで当選してきまして、今回、法務委員会に所属になって初めて質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 まず、今回の電子公告制度なんですけれども、今、実は永田委員の方から先進国に先駆けてという発言もあったんですが、諸外国はどうなっているのか、このことをちょっと教えていただければと思います。

○実川副大臣

 諸外国がどのようになっているか、そういう問いでございますけれども、電子公告制度の実施につきましては、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスの四カ国について調査をいたしました。ドイツにおきましては、我が国の官報に相当する連邦公報への公告を行う際に、付加的にインターネットによっても公告することが認められておりますけれども、インターネットの公告のみで足りるとする法制を採用している国はございません。

○本多委員

 今言った主要な先進国ではこの制度はとられていないということなんですね。 実は、私の一般的な感覚からいうと、いろいろな商取引とかでは外国の方がインターネットの使用というのは進んできた部分が多いと思うんですけれども、その諸外国が採用していない理由というのはどういうふうに法務省としては把握されていますか。

○野沢国務大臣

 外国でこれを採用していないということでございますが、これはまだ詳しく調査を進めているわけではございませんが、こちらの方でいろいろと総合して推察いたしますと、電子公告の場合には、紙媒体である官報や新聞紙への公告とは異なりまして、公告が適法に行われたかどうかについての客観的証拠が残らないという問題があるためではないかな、かように思っておるところでございます。

○本多委員

 そうですよね。そのとおりの問題点があるので、諸外国では、インターネットの使用がもっと普及している諸外国においてもされていない。そこをあえてその困難性を乗り越えてするというそこの理由と、どう克服するかをお答えください。

○野沢国務大臣

 これは、これまでの制度が相当コストがかかるということが一つございます。それから、別の委員にもお答え申しましたように、日本におきますITの普及が大変進みまして、会社ではもう九割以上の会社がこれを活用しておりますし、一般家庭でも随分普及が進んで、八割というレベルまで来ているということからいたしますと、電子公告を採用することによりまして、非常に簡単にアクセスができるということ、そしてまた、ある一日だけの新聞公告と違いまして、一定期間内繰り返し繰り返しこれを拝読できる、こういったメリットはありまして、それらを総合しますと、やはり、今回電子公告を取り入れることが、株主の皆様、それからまた会社に対して関心のある皆様に大変便利であるということが一番の理由でございます。

○本多委員

 そのことは多分ドイツ、フランス、アメリカでも同じだと思うんですよね。株式会社にとってはインターネットで公告を出せた方が便利なことに対しては一緒なので、今のメリットは多分諸外国でこの制度を実現したときにも当然起こるもので、お答えになっていないと思うんですよね。 ですから、こういう新しい外国にもない制度をどちらかというとインターネット等の使用とかについて憶病であった日本の政府がやるということに際しては、もうちょっと、相当、外国ではなぜこの制度を、当然外国の企業だってそういう要求をしていると思うんですよね。それをしていない理由というのはもうちょっと勉強、研究されてから、していないということなんでしょうか、そこは。    〔委員長退席、森岡委員長代理着席〕

○野沢国務大臣

 確かに外国に先駆けてという点はそういった御指摘も出てくるかとは思いますが、今私どもがe―Japan計画で取り組んでおりますことは、まさに日本がおくれを克服しまして世界一のむしろ電子政府をつくりたい、こういうことがございますので、おくれていたのがトップランナーになるんだ、こうまずお考えいただきたいと思うわけでございます。 そして、具体的には、今回、各委員からも御指摘が出ておりますように、第三者的立場にあります調査機関という制度を活用して、ここでやはり客観性を担保しながら、問題の公平、公正な運用を図りたい、かように考えておるわけでございます。

○本多委員

 はい、わかりました。おくれていたからトップになるというその発想は非常にいいと思います。 ただ、これまで紙媒体でやってきたものをインターネットにかえていくということを裏支えするために調査機関ということを、非常に工夫をされて、これも当然、電子公告は外国にないわけですから、調査機関制度というのも外国にはないわけですよね。だから、新たに、ほぼ世界で初めて、こういうインターネットに載っている情報が本当にあるのかどうか、常にあるのかどうかを調べる調査機関という制度を設けられたというふうに私は理解をしています。

  しかし、今、山内委員との質疑を聞いていましても、本当にそういうことが可能なのかなという実は疑問があるんです。六時間ごと、八時間ごとに本当にその公告がインターネット上に載っているのかどうかということをチェックされるということなんですけれども、逆に、じゃ、それ以外の時間、もうインターネットのホームページというのは、いつでも、意図的にも変えられるし、それから、いろいろな人が悪ふざけで、今、改ざんをしよう、ハッカーとかそういう、つまり、何の悪意もなくても悪ふざけをして困らせることのためにやっている、そういう人たちも存在するわけですよね。 そういう中で、六時間ごと、八時間ごとにチェックをしていますから大丈夫ですよ、それがもう本当に、株式会社の合併であるとかそういう重要な情報に関してですね。それでいいのかどうか、そこをお答えいただければと思います。

○実川副大臣

 御指摘の六時間から八時間置き、そういう御指摘がございますけれども、調査機関による調査を一分、一秒に一度というような頻度で行うことができれば理想的ではありますけれども、そのような調査は莫大なコストを要すると考えられますし、また、制度としましても経済合理性を持つものでもございません。

  しかしながら、そもそも調査機関制度は、一分、一秒の中断もなく電子公告が掲載されたことを証明するための制度ではなく、客観的な証拠が残らないことを奇貨としてわずかな期間しか公告を掲載しないようないいかげんな電子公告が行われることを防止することを第一の目標としているものでございます。

  この観点からは、六時間から八時間に一度、任意の時期に調査を行えば、電子公告を実施する会社はいつ何どきとも調査が行われることが予想することができませんから、いいかげんな電子公告をすることができなくなるという効果は十分に期待することができるわけでございます。したがいまして、六時間に一度や八時間に一度というような頻度でありましても、調査機関制度を設ける合理性は十分にあるものというふうに考えております。

○本多委員

 いいかげんな電子公告をする会社がなくなるのは、今わかりました、御説明で。 ただ、悪ふざけで、全然関係のない第三者がそのホームページを改ざんするとかそういう動きに対しては、この六時間、八時間ごとのチェックで足るんでしょうか。

○実川副大臣

 会社に要求されている公告は、例えば、合併といった一連の手続の有効無効にかかわるものでありまして、合併を行おうとする会社が、電子公告について客観的な証拠が残らないことを奇貨として、十分な公告を行っていないのに行ったかのようにして合併の登記を行うという事態が生ずることを防止する必要がございます。そして、そのためには、第三者が公告をチェックすることによって電子公告が行われるかどうかについての客観的な証拠を確保することが不可欠でございます。

  これに対しまして、行政による情報公開については、通常は法律上の手続の一部という性質ではなくして、国民に対する情報提供、それ自体を目的としているものでございますので、第三者によるチェックの必要性は低く、むしろ、セキュリティー施設の確保または人的管理体制の充実等の措置によりまして、情報の誤りあるいは改ざん防止の対策を講ずることが重要であるというふうに考えております。

○本多委員

 何か私が聞いたことに答えていただいていなくて、聞いていないことに答えていただいたような気がしますが、それはわかりました。

  私が申し上げたいことは、今回、世界に先駆けてやるんですから、実験的な面もあると思うんですね。私が言いたいのは、ここで不完全だとは言えないのかもしれないんですけれども、本当に世界で初めてやるわけですよ、インターネットの画面が本当に載っているかどうかを調査機関という制度までわざわざつくって。これは本当に、しばらく後にアメリカとかドイツやフランスがまねてくれるんだったら、それは日本も成功したということになるんですけれども、やはり世の中には紙媒体が残る部分があって、アメリカやドイツやフランスでも、ここだけは紙媒体でやるというふうに残っていく可能性だってあるわけですよね。

  そういうところもしっかりと今後とも御検討をいただいて、私は、インターネットの画面を本当にあったかどうかを調査機関が調査するという発想自体が、今回この電子公告をやるために苦肉の策として出された意味はよくわかるんですが、本当に今後もいろいろな意味で可能なのかなという疑問があるんです。それはもちろんうまくいけばいいんですけれども、そこのところは不断に今後とも見直しをしていっていただきたい。 若干、先進性があるということは、不安な部分もあるということは、大臣、ある程度お認めになっていただけますか。

○野沢国務大臣

 せっかく開発してまいりましたIT技術、これをやはり私どもは実務の上にも大いに利用、活用していくことが大事だと思っております。 私も、新聞を大いに見てここまで来ておりますが、なかなかまだいわゆるITに関する技術的な習熟が十分でないために、その両方を今見比べながら仕事をしているというのが実態でございますが、これからの課題といたしましては、できるだけ、やはり紙を使わない形での仕事が進むことが大変大事だと思っております。

  先ほど、永田委員からも御指摘がありましたように、例えば、海外で情報が欲しい、外国の株主さんが大変ふえております関係からいたしましても、そういう面では大変な進歩ではないかと思っておりまして、諸外国にも大いにお勧めしたいと思っておるわけでございます。

○本多委員

 わかりました。 それで、調査機関というものをつくったわけですけれども、これが、民間の会社がやって、国で、法務省とかがやらない理由はどういうことにあるんでしょうか。

○野沢国務大臣 そもそも、このIT技術の発生過程からいたしますと、民間の皆様が、創意工夫と競争の中から立派なサーバーその他、お仕事をしておられるわけでございます。 もともと小泉内閣の一番の基本方針は、民間でできることは民間へ、地方でできることは地方へという中で進めてきたことでございますので、もちろん、法務省が直接やることについては、能力その他はないわけではありませんが、できる限り民の皆様のお力と可能性、将来の発展性を考えますと、やはり民間の方々にやっていただくことが正解ではないかな、こう思っております。

○本多委員

 私は、この電子公告の調査機関というものの仕事というのは、単にホームページをチェックするだけですから、プログラムがなくたって、本当に個人が見たっていいぐらいの技術ですから、余り民間の技術力とかなんとかという話とは関係なくて、別に役所でもできる仕事だと思うんですね。

  民間でできることは民間にという発想は、私も当然そのとおりだと思っていますが、私は、政府の仕事をいろいろ削っていったときに、外務省と防衛庁はもちろんなんですけれども、法務省でやっている仕事というのは割と残ってくる部分なんじゃないかな、民間がやっていいものじゃない部分が非常に多いと思っているんですね。

  そういう観点で、今の小泉内閣の政府では、本当に、民間にできるものは民間にとかいって、全然そういうのが進んでいない部分も多い中で、何でこういうところだけ民間にしているのかなというのは、私はいまいち疑問だということを申し述べておきます。 そして、天下りがこういうところに行かないよということは、参議院でしっかり何か大臣、御答弁されていますけれども、それはそういうことでよろしいんでしょうか。

○野沢国務大臣

 天下りというようなことは全く考えておりませんで、やはり、先ほどから申し上げていますように、民間の皆様が自由な競争の中でより一層の効率を上げていくということが主眼でございますから、天下り先としてこれがつくられるというようなことではございませんので、繰り返し確認をしておきます。

○本多委員

 わかりました。この調査機関に天下りのあっせんをすることはないということで確認をさせていただきたいと思います。 それで、この商法改正が出てきたのは、法制審の答申を尊重されて提出されたということで理解はよろしいでしょうか。

○野沢国務大臣

 法制審に諮問もしておりますし、パブリックコメントもいただきまして、各方面のお知恵を総合した結果でこのような形をとっているわけでございます。

○本多委員

 最近で法制審の答申を無視している例が私はあると思うんですけれども、思い当たるものはございませんか。

○実川副大臣

 最近、法制審議会から答申をいただいたにもかかわらず、法務省がその内容に沿った法案を提出しない例といたしましては、平成八年二月に答申をいただきました民法の一部を改正する法律案要綱がございます。なお、この要綱の中ですけれども、選択的夫婦別姓制度の導入を内容とするものでございます。

○本多委員

 法制審というのは国の税金をかけて学者の皆さんに集まっていただいて答申をもらっているわけです。審議会制度がいいかどうかという議論は別にありますけれども、今の政府は、法制審というものを大変尊重しているから、こういう会社法がどんどんどんどん毎年法制審の方針に従って皆さん提出してくるわけですよね。なぜ民法は提出されないんですか。

○野沢国務大臣

 確かに法制審は、最高裁なり日弁連なり、あるいはさらなる学識経験者の皆様、大勢いらっしゃいますが、国民全体の意見を必ずしも代表していない。例えば、国会での御議論にかけましたときには、なかなかまだまとまらないということもございまして、そういったこともございまして、必ずしも法制審どおりいかないということも今までにはあったわけでございます。 その意味で、この委員会あるいはいわゆる世論というような、広い大きなまだまだ多数の国民の皆様の御意見を徴しての仕事を私どもは進めておるわけでございます。

○本多委員

 大変今問題発言をされたと思うんですね。国会に提出されていないものを国会の意見がまとまっていないと言うことは、どういうふうに把握をされているんですか。提出してから私たちが議論をして、本会議場で採決をしたいんですが。

○野沢国務大臣

 私どもは、さまざまな情報をすべて総合し、国会での御議論を踏まえてということでございますので、決して国会を無視してということではございませんので、その点はよろしくお願いします。

○本多委員

 大臣は、参議院の我が党の円より子議員の質問に、こう答えているんですね。「法務省としましては、平成八年の法制審議会の答申の内容を踏まえながら、少しでも多くの方の御理解を得られるように努力を続けてきた」とおっしゃっているんですが、実は、二月十七日の大臣閣議後記者会見で、法務大臣は、「夫婦別姓という制度そのものについて、特に大臣のお考えはございますか。」「私、個人的には同じ方がいいかなと思っておりますけれども、これもしかし、それなりに賛否両論があり」、こういう発言はされましたか。「私、個人的には同じ方がいいかなと思っておりますけれども、」と。

○野沢国務大臣

 これは記者の方々から、自民党の先生方がまとめようとされている夫婦別氏法案についての御質問の後に、さらにこの制度そのものについての御質問をいただいたときの問題でございますが、別氏を選択できる制度になっても、私個人の家庭ではどうしますかという趣旨で、個人的には同じ方がいいかなと申し上げたわけでございます。

  しかしながら、他方で、別氏を強く望んでおる方々もいらっしゃることはよく存じておりますし、夫婦別氏制度については国民の間でも意見がまだ分かれておるという状況にございます。 この問題は、家族制度のあり方等にかかわる重要な問題でありますので、十分な議論を尽くした上で、大方の国民の御理解を得ることができるような状況で制度改正を行うのが望ましいと思っておりまして、会見の際にもそのことを原則的に申し上げて、あとは個人の問題ということで感想を申し上げたわけでございます。

○本多委員

 この「個人的には同じ方がいいかなと思っておりますけれども、」というのは、普通の解釈では、大臣、多分御結婚されてもう長くいらっしゃるんでしょうから、そういうことだと解釈できないんですね、これは。 制度そのものとしてもこのままの別姓を認めない制度を続けるべきだというような発言にとれるようなことを、居酒屋の会話じゃなくて、大臣閣議後の記者会見で新聞記者に言っているということは、この御理解をいただくように努力をしている姿勢とは私は思えないので、今後は、こういう国民に御理解をいただく方向で、法制審の方針で、しっかりと法務省として、この法案がどういう形にせよいずれ通っていくような努力をしていただきたいと思います。

○野沢国務大臣

 法務大臣といたしましては、本当に各国民の御意見、そしてまた国会での御議論、また法制審等の答申その他を尊重しまして、しっかり判断するつもりでございます。

○森岡委員長代理

 御苦労さまでした。