衆議院-法務委員会 2004年(平成16年)06月11日




 「民事関係手続きの改善のための民事訴訟法等の一部を改正する法律案」に対する質疑

○柳本委員長

 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。本多平直君。

○本多委員

 民主党の本多平直です。 まず、委員会の再開に際し、委員長、おくれられた理由をお教えください。

○柳本委員長

 申しわけございません。ちょっと車が込んでしまいましたので、ちょうど七分前に出たんですけれども、申しわけございませんでした。

○本多委員

 ぜひそういうことのないようにお願いをいたします。

○柳本委員長

 初めてでございます。

○本多委員

 それでは、法案の質問に移らせていただきたいと思います。 午前中に松野委員の方からも質問があって、こういう民事裁判の手続を電子化していくという方向性に関しては、できるところからきちんと進めていくという方向性については、いいことだと私も思っているんですが、ちょっと大きな話という観点から、行政手続も今一生懸命IT化、オンライン化などを進めている。そして、裁判の手続も徐々に進めているわけですが、こういうふうにオンライン化を進めていくことのプラスという面は、迅速化でありますとか、かかわる人間の簡便性でありますとかというところは理解をしております。 しかし、例えば、松野委員の方から午前中割と細かく具体的に問い詰めさせていただいたんですが、マイナス面というのも当然あると思うんですね。そこに関して、政府としてはどう把握をされているのかをお答えください。

○実川副大臣

 本法案では、民事訴訟手続等におきます申し立てをインターネットで行うことを可能とするなどの措置を講じておりますけれども、このようなオンライン化を図るに当たりましては、今委員御指摘のように、他人への成り済まし、あるいはまたデータの改ざんといった事態を防止する必要があるものと考えております。 そこで、本法律案では、インターネットによる申し立てを行う場合には、署名押印にかわる措置を講じなければならないものとしておりまして、その具体的な方法でありますけれども、最高裁判所規則で定められることになっておりますけれども、いわゆる電子署名を付さなければならないとする予定であるというふうに聞いております。これによりまして、成り済まし等を防止して、セキュリティーを確保することができるものというふうに考えております。 また、御質問の、インターネットを利用しない方の利便性についてでございますけれども、本法案は、従来の書面による申し立てはこれまでどおりとすることができることになっております。したがって、インターネットをしない方の利便性が損なわれるということはないというふうに思っております。

○本多委員

 副大臣からは、私はマイナス面を伺ったんですが、それに対してどう対応するかというところまでお答えをいただきました。 ということは、政府としては、今のところマイナス面がないというお答えかと思うんですが、しかし私は、やはり新しい技術を、どうも政府の答弁というのは、別に、完璧だと言っておく方がいいのかどうか私はわからなくて、新しいことをやっていくんだから、いろいろ問題点を発見しながら、それを順次直していくというような観点でお答えをいただければ納得がいくんですが、いかがでしょうか。 今で大丈夫だということでいいのか。そうじゃないでしょう、新しい仕組みをやるわけですから。

○野沢国務大臣

 私どもは、昨今の電子技術の進歩に対しまして、新しい法律の各種体系をそういった新技術の上に乗せていくということで、最善の議論を尽くして法案をつくっておるわけでございます。 そういうことで、今委員御指摘のとおりの問題点あるいはマイナスの面というのは、運用の過程であるいは出てくることも考えられますので、その時点でまた十分考えまして、しっかりと見直しをしていけばいいんじゃないか。だんだんよくするということが一つ前提としてあると思います。

○本多委員

 わかりました。大臣のような姿勢で臨んでいただければ、こういう新しい制度を導入していくときに、非常にいい考え方だと思いますので、まさにこの瞬間にも新しい技術、つまり、いい方の技術も進んでいますが、悪いことをしようという方の技術もどんどんどんどん毎日進んでいるのがインターネットの世界ですので、そこのところを大臣も認識をされて、新しい制度の運用に努力をしていただければと思います。 もう一点、私、これはマイナス点とは言い切れないんですが、こういうことをどんどんIT化を進めるのにはやはり費用がかかると考えております。今、政府全体でも、e―Japanということで、どんどんどんどん、電子化すると言えば予算がつくというような風潮が見受けられまして、ある種の新しい公共事業として、コンピューターのハードの会社であるとかソフトの会社が大変もうかっている。そのこと自体、いい悪いは問いませんが、この今回の法律制度にもやはりある程度のコストがかかると思うんですが、最高裁さん、どのぐらいの費用が今回の新しい法案によってかかっていくのか、お答えを願います。

○中山最高裁判所長官代理者

 裁判所におきましては、平成十四年度から、裁判手続のオンライン化の基礎となるシステムとして、インターネット上において利用者に対する窓口を提供するシステムである汎用受付等システムと、電子署名を付した安全な通信を確保するためのシステムである認証局システムの開発を進めてまいりました。 さらに、昨年十月二十九日に、第一審の民事訴訟手続における申し立て等のうち、民訴規則三条一項の規定によりファクシミリを送信して裁判所に提出することができるものについて、オンラインの方法でこれを提出することが可能とするために、電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立て等の方式等に関する規則を制定したところであります。この規則に基づきまして、午前中にもお話し申し上げましたが、間もなく札幌地裁において、今委員がおっしゃったように、まず確実で、それほど問題のないところをきちんと検証しながら進めたいということで、期日指定・変更関係のことに限ってまずは出発してみたいと思っております。 これらの汎用受付等システムと認証局システムの開発のために、既に、平成十四年度、開発費用として三億六千万円、機器整備費用として約一億三千万円、平成十五年度は、開発費用として約一億九千万円、機器整備費用として約五千万円の各予算措置を認められてきたところであります。平成十六年度におきましても、機能をさらに拡充するために、開発費用として約一億一千万円、機器整備費用として約五千万円、また研修費用、運用費用、保守費用として約三億六千万円の予算措置が認められました。 平成十七年度以降の展開につきましては、これは国民の司法に対するアクセスを拡充するという見地から、これからの札幌地裁での運用状況等を見ながら、さらにオンラインを可能とする範囲を拡充していくことにしている予定でございますが、現段階で、平成十七年度以降の予算要求について金銭的なことを述べることは、まだ検討中でありできないということで御理解いただきたいと思います。

○本多委員

 これまでも大体億単位のお金をこういうオンライン化に使ってこられて、私は、ちょっと予算の仕組みがどういうことなのかまだ定かではないんですが、今後もどれぐらいかかるかは予算要求のところになってみないとわからないということですので、同じようなお金、もっと多くの予算が使われていく可能性があると思います。 私個人なんかでもそうなんですけれども、やはり、インターネットとか、まさにそれよりもっと大きなシステムでやるわけですから、わからないので業者任せになるというようなことが今まで以上に、今までの一般的な公共事業以上に起こる蓋然性があると思います。そういったところで、最高裁さん、そういうふうにならないような工夫を何かされているんでしたら、それについてお答えをください。

○中山最高裁判所長官代理者

 裁判所では、システムの開発はこれ以外にもいろいろ行っておりますけれども、委員御指摘のように、開発業者任せにならないよう、別の専門業者の支援を得ながらプロジェクト管理を行うなどしてきているところでありますし、間もなくCIO補佐官というものを採用する予定にしており、これは民間からでございますが、その方たちの意見も十分聴取しながら、さらに検討を進めていきたいと考えているところであります。

○本多委員

 ぜひ、オンライン化に伴って予算のむだ遣いなどが発生することのないように、しっかりとした運用をしていただければと思っています。 次に、最低売却価額制度、これを改めていくということについての質問に移らせていただきたいと思います。 この制度があるという背景に、法務省さんから御説明をいただきましたけれども、外国にはない、競売のときにこういう執行妨害という、アンダーグラウンドな皆さんが自分たちで不当な利益を得るために執行妨害ということが日本では割と行われている、このことが最低売却価額であるとか今回の基準価額ですとか、こういう制度を設けなきゃいけない背景にあるというふうに伺いました。 現状を、こういう執行妨害というのは外国には余りないということですので、なぜこういうことが日本では起こっているのか、どんな対策を今法務省さんとしてはされているのか、お答えをください。

○実川副大臣

 委員御指摘のとおり、我が国にあるような執行妨害、これは諸外国には存在していないと言われております。その理由についてでありますけれども、詳細に分析した資料はありませんけれども、あくまで推測にすぎませんが、諸外国では、執行妨害により得られる経済的な利益がそれほど大きくないために、反社会的勢力にとって執行妨害を行う経済的動機が生じにくいということがあるものというふうに言われております。 それから、我が国においては、現行の民事執行法の施行後、執行妨害対策のために、これまでに何回か民事執行法などの改正を行ってまいりました。最近では、昨年の民法及び民事執行法の改正によりまして、執行妨害目的であります不動産を占有する者を立ち退かせるためを目的とします保全処分の発令要件を緩和したり、また執行妨害に悪用されております短期賃貸借制度を廃止するなどの執行妨害対策を講じております。 昨年の改正法はこの四月に施行されたばかりでございますので、その改正法による執行妨害対策の効果でありますけれども、まだ判明していない状況でありますけれども、今後とも、執行妨害の動向を注視する必要があるというふうに思っております。    〔委員長退席、下村委員長代理着席〕

○本多委員

 対策もとられているということを伺ったんですが、外国にないようなことが、もちろん土地というものの価値が日本は外国と違うというような背景があるにしても、やはり司法の根幹にかかわるところだと思いますので、こういうところでそういうアンダーグラウンドな勢力が不当な利益を得るようなことが起こらないように。 そして、今回のこの改正案というのは、ある意味、執行妨害のようなことが起こるということを残念ながら前提にして、それを防ぐという改正であると思います。もちろん制度を改善していくということは当然必要なんですけれども、あわせて、執行妨害という悪の大もとをしっかり正すという方も怠らずにやっていただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。 もう一点なんですが、これはなかなか、役所の方から説明を聞いても、私としてはどうなのかな。つまり、今までやっていた最低売却価額というものではなかなか売れないケースがある、競売が成立しないケースがあって、今回、二割下げたところまで認めるという制度に改めるわけなんですが、これを運用していたのは最高裁さんということでよろしいんでしょうか。不動産鑑定士さんなんかが実務をやられていたということだと思うんですが、どうしてこういう制度を改正しなきゃいけないような運用の問題点があったんでしょうか。

○園尾最高裁判所長官代理者

 評価につきましては、これまで裁判所とそれから評価人との間でさまざまな研究をして、適正な評価ということについて検討を重ねたところでございます。 この評価の適正化それから執行妨害、それと最低売却価額の関係について御説明を申し上げたいというように思います。 最低売却価額につきましては、民事執行法が制定される前の古い手続では、売却をしても入札がないというような場合には、原則的に最低売却価額を引き下げなければならないという規定になっておりました。したがいまして、入札を妨げておくと値段が下がっていくということから、価格を下げる目的で執行妨害をするということが後を絶たないという指摘がされておりまして、民事執行法の制定によりまして、一たん定めた最低売却価額は原則として下げないんだという大きな方針を打ち立てたわけでございます。このような方針を出して、十数年間にわたって鋭意検討をしてまいりまして、これはこれで大変大きな成果を上げまして、執行妨害排除にも役立つという評価を受けてきたところでございます。 ところが、長引く不況の中で、特に平成七、八年というようなころになりますと、不動産価格がかなり大幅に減少していくという、我が国ではかつて経験をしたことのないような事態に直面いたしまして、これによって不動産の最低売却価額を下げないということを厳格にやっていきますと物件が売れないという事態に直面いたしました。 そこで、最高裁としましては、平成十年に最高裁規則を改正するというような方法もとりまして、そのころ以降、最低売却価額を評価人の意見を聞きながら弾力的に下げていくというような運用を始めたところでございます。その結果、売却率も平成十一年以降徐々に上昇してくるということで、不動産競売の迅速化が図られて、今日に至っておるというところでございます。 そのような中ではございますが、余りに急激に最低売却価額を下げるというと、これは、かつて経験したような競売妨害というようなことを誘発していくということで、現在、評価人の意見も聞きながら慎重に下げていくということで、弾力的ではありながら、例えば二割前後の減少というようなところが大変多くなっておるという実情にございます。今回の法改正の検討の中でも、そのような実情を考慮した上で、より弾力的な売却手続を検討されたものだというように理解をしております。

○本多委員

 いろいろな努力をされているという御説明はわかりました。 ただ、私がお聞きをしたかったのは、そもそも最低売却価額というのを決めるときの決め方というのをもうちょっと努力をすれば、このような改正を、幾ら世の中の土地の値段の状況が変わったりしても、不動産鑑定士という方は、そのことで食っている仕事なわけですね、私たち素人にやれと言っているわけではなくて、そのことのプロなんですから、そういう状況に対応してもうちょっと適切な値段をつけていたら、今回のような改正はなくても運用でしっかりやれたのではないかという私の意見を申し述べて、この問題から移らせていただきたいと思います。 次に、この法案の改正のポイントの一つ、養育費の問題について、多分、後からの委員もやると思いますので、簡単にちょっと、私の感想めいた話なんです。 今回新たに、養育費の取り立てということで間接強制という方法がとられるということになって、これは、養育費が払ってもらえないで困っている、一般的にはお母さんと子供さんにとっては、武器が一つふえるわけですから、非常にいいことだと思います。 ただ、今までの直接強制がなかなか使いにくいという声がお母さんのサイドからあったということについて、どうしてなんだろうと、ふと、まだわからないところがあるので御説明いただきたいんですが、つまり、会社に直接取り立てに行くと会社をやめちゃうかもしれない、そういう実態というのは本当にあるんでしょうか、どうなんでしょうか。そこをお答えください。

○中野大臣政務官

 本多委員の御質問にお答えをしたいと思います。 養育費の支払い義務につきましては、これまで、今おっしゃるとおり、債務者の給与債権を差し押さえる等の直接強制の方法しか認められていなかった、これはおっしゃるとおりでございますが、このような強制執行を行いますと、今おっしゃるとおり、債務者が勤務先にいづらくなって辞職または失職するおそれがあることから、このような方法をとり続けられない場合があると指摘されております。 これは、実際に平成十三年の最高裁判所が行った実情調査によりましても、債権者が強制執行制度を利用しなかった理由、いろいろございましたけれども、その中には、例えば、この手続をよく知らなかったとか、また費用がかかるとか、そういうこともございますけれども、特に、相手方が職を失う心配がある、特にこれは離婚の話でございますから、いわゆる債権者が職場の事情をよく知っているという中で、そういうことを挙げた方が多くいられるわけなんです。 このようなことから、この法律案では、直接強制のほかに、債務者が履行しなかった場合一定の制裁を持つよう裁判所が命ずるという、この間接強制の方法によることも認めることにしたわけでございまして、これによって、先ほど言いましたいわゆる差し押さえ等の直接強制をとりづらいような事例においても養育費の履行確保を図ることができるというふうに考えたわけでございます。

○本多委員

 当事者の方がそう言っているんですから、現場を知らない私がどうこう言うのもなんなんですが、私の個人的な意見としては、要は、会社にいづらくしてやった方がいいとまで思うんですよね、つまり、養育費を払っていないような父親は。本当にやめちゃったら困るんですが、そこのところは、私は、会社の側に問題があって、家庭でトラブルがあるからといってやめなきゃいけないような雰囲気、離婚だろうと養育費を払っていなかろうと、会社をやめなきゃいけないようなふうになるのも、またそれはある面で困るので、そこは、もうちょっと運用と、世の中のお互いの……。 小さな会社では難しいということを実務の担当者から聞きました。でも、大企業なんかでは、もうどんどん直接強制をかけても、経理担当者がある程度把握をしたり上司がわかるだけで、会社にいづらくなるというようなことはないので、今回、新しい武器がふえましたけれども、私は、直接強制という手段でしっかりと、養育費を払うと言っていたのに払わないような、一般的には元夫のような人にしっかりと取り立てていくということもあきらめずに追求をしていただきたいと思っています。 その観点と関連をするんですが、今回、間接強制という手段をふやしたことはいいことだと思いますが、世の中には、延滞金がつきますよ、なかなか払わないとプラスでつきますよという、ペナルティーで払わそうというものは、別に公的なものに限らずいろいろあるわけですが、果たしてこれの実効性をどのぐらいあるとお考えなんでしょうか。つまり、今まで払わない、子供を育てる、自分の子供を育てる費用を払わないような人に、多少の上乗せをするから払うというのは、どのぐらいの実効性を見込んで今度制度を導入されているんでしょうか。

○中野大臣政務官

 今、本多委員がいろいろおっしゃったことはわかる面が多々ございますけれども、御質問の中に、今の債務者が養育費を支払わない理由についていろいろあるわけでございますけれども、先ほど申し上げました最高裁判所の実態調査によりますと、債権者が認識している、なぜ払わないかということについては、まず相手方がお金がない、こういうことがあります。これと、お金があるけれども支払いをちゃんとしないという場合と、二つを債権者は理解している。お金がない方は、やむを得ないと言っちゃおかしいんですけれども、どうしようもないんですけれども、今回私どもが法案の間接強制、これは、債務者が資力があるにもかかわらず支払わない場合に用いる方法だということは御理解いただけると思うのでございます。 間接強制というのは、債務者が履行しない場合に一定の制裁金を支払うよう裁判所が命ずるものでございまして、債務者にとっては、債権者に支払うべき金額が増加していくということはできる限り避けたいと考えるのが通常ではないだろうかと思うのでございます。過去の判例等でいきますと、例えば、引き渡しをしないというときに一日一万円とかというような判例もあったり、そういう意味で、債務者の方が経済的にいろいろ不利益をこうむるということは理解すると思うのでございます。 ですから、そういう意味で、具体的ないろいろな事案におきまして、裁判所が決定として、債務者に心理的な強制が働くような適切な額の間接強制金が定まりますと、養育費の任意履行を促す効果は十分にあるんだろうと考えておるわけでございます。 よろしくどうぞお願いします。

○本多委員

 ぜひそういう方向でこの新しい制度がしっかり活用されることを念願しております。 しかし、やはりそうはいっても、払わない、払えないというケースが出てくると思うんですね。これは、事普通の借金を返さないという話とは違って、子供を育てるためのお金です。想像できると思うんですけれども、離婚をして片親で育てていくという大変さの中で、予定されていた養育費が入らないということがどういう状況を招くかというのは、まさに想像できるところだと思います。 私は、何らかのもう一歩先を、なかなかこれは、厚生労働省さんも絡みますし、法務省さんだけでどうにかできるような話ではないと思うのですが、一歩先を見た、例えば一時期公的に立てかえるであるとか、何か新しい方法を、検討を始めていただきたいと考えているんです。 こういう検討には、やはり法務省さんだけではお答えできないと思いますので、大臣が、内閣として検討を始めるぐらいのところは何とかお答えをいただけないでしょうか。

○野沢国務大臣

 子供は国の宝ということで、委員のお気持ちはよくわかるわけでございます。養育費の履行の確保を図るということは、子供の養育にとっては極めて重要なことと認識しております。 そのためには、御指摘のように、民事手続以外の方策も考えられるところでございますが、まずは、法務省としては、昨年、将来分の養育費についての給料債権の差し押さえ等を認める措置を講じまして、さらに今回の法律案では、間接強制の方法によることも認めることとしておるわけでございます。所管する民事法の分野におきましては、考え得る限りの措置を講じてきたところでございます。 このような措置によって、養育費に係る権利がより円滑に実施されることとなり、子供の養育に支障を生ずる事態が減少するものと考えておりますが、また内閣等における発言の機会等がございました暁には、私もそのお気持ちをしっかりとお伝えしたいと思っております。

○本多委員

 前向きの御答弁をありがとうございます。 もう時間があとわずかになっているんですが、法案に関する質問は大体この辺なんですけれども、法務委員会で、私、今国会で発言する機会も多分もうそんなにないと思われるので、ちょっと裁判ということで、関連をするかどうかわかりませんが、別件で質問させていただきたいんです。 私、ずっと、痴漢冤罪ということで困っているという方々とおつき合いをしてまいりました。もちろん、皆さんの立場からいうと、裁判はしっかりと行われている、冤罪というのも、そういうことはできるだけないようにしているというお立場はよくわかっております、当然そうだと思っています。そして、もし冤罪というようなことがあったときも、再審とかいう、さらにその制度も担保されているということはよくわかっているんですが、実は、私のような世代の普通のサラリーマンが、ある日突然犯罪者になる、そして、ましてや冤罪というものが起こりやすい、極めて満員の込んだ電車の中で、数少ない証拠のもとでということで、私はやはりここは問題が何かあり得ると思っております。 つまり、それは、法務省さんの場合だと検察ということになるんですが、裁判の段階でもそうですし警察の段階でもそうですし、もっと言いますと鉄道会社の段階でもいろいろな問題があると思うんですけれども、こういう問題があるということを大臣にちょっと認識していただきたいと思うんですが、大臣はどういう御認識がおありでしょうか。    〔下村委員長代理退席、委員長着席〕

○野沢国務大臣

 刑事裁判は、刑事事件につきまして、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにして、刑罰法令を適正かつ迅速に実現することを目的としておりまして、刑事訴訟法においても、そのための具体的な裁判手続を定めているところでございます。 もとより有罪無罪につきましては、個々の裁判の結果によるわけですが、検察当局においては、疑わしきは被告人の利益に、この原則によりまして、検察官が公訴事実の挙証責任を負っていることを踏まえまして、御指摘の電車内での痴漢事件等につきましても、まずは捜査段階で可能な限りの証拠収集に努めまして、収集された証拠を慎重に吟味、検討して、処分を決定し、公訴を提起した事件については適正に公訴維持に努めているものと承知しております。 なお、昨今の首都圏等における電車の混雑率は逐年改善をされておりまして、そういった面からも間接的に改善が図られていくかと期待をいたしております。

○本多委員

 そういうことで困っている、まさに普通の、まじめに会社にまさに満員電車の中で通っていて、そして奥さんにも大変な思いをさせ、子供さんにも大変な思いをさせて、こういう犯罪で、もちろん実際に被害に遭っている女性の方々はたくさんいるわけで、こういう犯罪自体は許すことができないんですが、間違われやすい環境の中で間違われている方がいるということは、ほぼ私はある事実だと思っていますので、ぜひそこのところはしっかりと捜査面でも判断をしていただければと思います。 冤罪の話をしましたので、最後に一点、大臣に御確認をしたいと思います。 会期末が迫っておりますが、私は、死刑についての議論、この法務委員会でも時々出ます。政治家によっていろいろお立場がある、特に大臣は、今の法体系のもとでの法務大臣ですから、それはその法の、刑の執行とかに関して一定の責任がおありだという立場はよくわかっていますし、意見の違いをここで論じるつもりはないんですが、執行の時期についてなんです。これがいわゆる、もちろんこれを法務省さんはお認めになったことはないですが、国会の会期が終わった後を選ぶとか、それから参議院選挙が始まって政治家がみんな忙しくて、一定数、反対派もいるわけですよね、そこにそういう批判が起きない時期を選ぶという傾向があるという指摘がされています。 このことについてお認めにならなくていいんですけれども、私は、法体系の根幹にかかわることは、私たちが選挙をいつやるかとか、会期をいつやるかというのは、極めて政治的な駆け引きの中で決まる、政治闘争の中で決まる政治的な日程なんですよ。こんなことで、人間の一生を絶つという極めて重い刑の執行時期が左右されるというのは、全く関係があってはいけないことだと思っていますので、そこだけは大臣にお答えをいただきたい。 こういうものと、我々が国会をいつ閉じるか、参議院選挙をいつやるかという政治日程とのかかわりなどが全くない、そういう判断をするべきだと考えますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

○野沢国務大臣

 死刑執行に関しましては、個々の事案につきまして、関係記録を十分に精査し、刑の執行停止あるいは再審または非常上告の有無、恩赦を相当とする情状の有無などにつきまして慎重に検討しまして、これらの事由等がないと認めた場合に初めて執行命令を発することとしているものでございまして、特定の時期を選んでその執行をしているものではないと考えております。

○本多委員

 ぜひそういう立場で、それで、大臣もう政治家としての大きなまとめの時期に入られているという報道も聞いておりますので、大事な判断はしっかりと慎重になさるようにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。

○柳本委員長

 御苦労さん。