衆議院-予算委員会公聴会 2019年(平成31年)02月26日
 (国会会議録検索システムより抜粋) ※この質疑の動画はこちら




○本多委員 立憲民主党の本多平直です。  きょうは、公述人の先生方、大変お忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございました。  今、与党の先生の議論の中で、一つの数字にこだわるべきではないという大変示唆に富むお話をいただきました。我々も別に実質賃金だけにこだわっているわけじゃないですが、内閣総理大臣も、総雇用者所得にばかりこだわって論じるのは、しっかりと与党の先生からも指摘をしていただきたいなという、いい議論を聞かせていただきました。  私、明石先生を中心にちょっとお話をお伺いしたいと思っています。  先生の非常にわかりやすい御説明の中で、今、我々がこの予算委員会でずっと粘り強く追及してきました毎月勤労統計の問題、ちょっと背の高い別人にかえて、シークレットブーツを履かせて、頭にシリコンを載っけて、ばれたところは修正をした。このばれたところを修正した数字の、昨年、二〇一八年の実質賃金の伸び率さえ、我々、今、予算の審議をしている最中に出していただいていない、こういう状況にあります。  先生から見ると、この数字すらおかしいという指摘をきょうはいただいていると思うんですけれども、その数字すら出てこない中で来年度の予算審議を強いられているこの状況ということについて、ちょっと御意見をお聞かせいただければと思います。

○明石公述人 今、その数字すらというのは、参考値の実質賃金の方ですかね。  総務省の統計委員会の方も、参考値の方が伸び率については実態をあらわしているのでこちらを重視しなさいと言っている中で、名目だけ重視して実質は見ないなどということはあり得ないわけですから、これが出てこないうちに議論を進めるというのは、これは適切ではないと断言できます。  以上です。

○本多委員 ありがとうございました。  それで、実は、毎月勤労統計の件についてはまた他の委員からも質問があると思うんですけれども、私、先生と実は別な勉強会でお会いをして、ぜひこの本を読んだ方がいいよということで、先生がお書きになられた「アベノミクスによろしく」という本を読ませていただきました。また、最新、同じシリーズで著書も出されて、そちらも読ませていただきまして、これは大変ショックを受けました。  ちょっとその「まえがき」を簡単に繰り返させていただきたいと思うんですけれども、   アベノミクスについては、疑問を呈する意見もありますが、概ね結果を出しているという論調が世の多数を占めているでしょう。 と。これと私たちも闘って大変な思いをしてきているわけですが、  しかし、客観的なデータを基に分析してみると、それが大きな誤りであることがわかります。この本を読めば、良い結果を出すどころか、アベノミクスが空前絶後の大失敗に終わっており、さらに出口も見えないという深刻な状況に陥っていることがよくわかるでしょう。しかも、その失敗を覆い隠すために、GDPが、算出基準変更に伴う改定のどさくさに紛れて大幅にかさ上げされた疑いもあるのです。これはほとんどの人が気づいていないことです。 という、ここにこの本のエッセンスが込められているわけですけれども、私もこれを読んで大変衝撃を受けました。  今回、我々が追及をしている毎月勤労統計の問題に加えて、そもそもGDP自体に大きな偽装があるということを、先生のきょうのお話の中でも指摘をしていただきました。  ちょっとこのお話も、すごくわかりにくい話なんですけれども、大きな国際基準に合わせて変えた部分と、どうもここが先生は怪しいと指摘された「その他」と言いながらいろいろ変えている部分。ここも、実は、普通、「その他」というのは、我々統計を見るときでもいろいろな表を見るときでも見過ごすんだけれども、ここで随分盛られているんじゃないかというお話があります。  ちょっとその前提としてお話を伺いたいんですけれども、国際基準として変えた方はどう見たらいいのか。これは大体、おおむね、これでも上がる部分があるんだけれども、これは許容するべき上振れなのか、このことについてちょっとお聞かせをいただければと思います。

○明石公述人 二〇〇八SNA対応部分についても、かさ上げ率を見ますとアベノミクス以降が一、二、三位を占めていますから、こちらについてもこれは本当に正しい数字なのかというのはちゃんと詰めて考える必要はあると思うんですけれども、まあ「その他」と比べればそんなに突出はしていませんので、その限りでは、ただ、問題ないとは思いません、高くなっているという部分がございますので。  以上です。

○本多委員 この統計、GDPのとり方を変えたというのは、私も説明を聞いて、それは国際基準に合わせたといって、信じていたわけですけれども、そこにも問題があると先生は指摘をされているわけです。  ただ、先生がもっと指摘をされているのは、何げなく我々がふっと見逃してしまう「その他」と書いてあるところで、随分無理やりのかさ上げが行われているんじゃないかというのが先生の御指摘であります。  これに対して、先ほど、ちょっと自民党の議員から鈴木先生に御意見を求められて、鈴木先生は若干のコメントをされました。平等を期すためにも、ちょっとその反論も含めて、この「その他」のところをもう少し、どういうふうに内閣府が盛っていったのかという先生の、これはまだまだ証拠がなかなかつかめていないんですが、先生の推論をもうちょっと詳しく、わかりやすく教えていただければと思います。

○明石公述人 先ほど、鈴木公述人のお話の中で建設推計の話が出てきましたが、それは、「その他」の中のあまたある要素の一つにすぎません。  この「その他」の内訳につきましては、まあ私がぎゃあぎゃあ騒いだせいだと思うんですけれども、改定から一年経過した後になって、内閣府から内訳に近い表というのが出てきました。あくまで内訳に近いだけなんですね。  なぜなら、その内訳表の数字を合計しても「その他」と一致しないからです。その中で、建設推計の変更というのは要素の一つです。  ここにも怪しい部分があります。例えば、アベノミクス直前の六年間だけ、なぜか改定後マイナスになっているんですね。大きく下げられているという部分がある。  一番注目していただきたいのは、やはり消費なんですね。民間最終消費支出の九八%を占める家計最終消費支出というのがあるんですけれども、これと、総務省の家計調査の家計消費支出、この傾向がどうも一致していない。二〇一四年までは、家計最終消費支出に世帯数を掛けた数字と、あと、GDPの家計最終消費支出、これが同じような推移を示しているんですが、二〇一五年以降、急にワニの口があいたかのように乖離が大きくなっているんですね。GDPの家計最終消費支出の方が物すごく上振れしているんです。  それについては、私の近著である「データが語る日本財政の未来」の中で詳しく書いてありますので、参考にしていただければと思います。  以上です。

○本多委員 ここで、ちょっと先生に難しい問いをすることになるかもしれないんですけれども、先生が指摘をした以降、一年かけて、茂木大臣を筆頭なのか何だかよくわかりませんけれども、理論武装をし始めているんですね。我々も、これはいろんな委員会でこの「その他」問題、先生はソノタノミクスと。「その他」で、こんなにGDPが上がっていいのかと。でも、先生は逆の言い方もされて、かさ上げしている割にもしょぼい、こういうダブルの言い方をされていますけれども、そこまで無理しているという疑惑があります。  これは、先生の指摘も受けて、一年かけてプロフェッショナルな内閣府が理論武装してきたものを我々どうついていったらいいのかというところ、一つ御示唆をいただければありがたいなと思うんですけれども。

○明石公述人 一つは、先ほど申し上げた家計最終消費支出の部分ですね。ここは、ほかの省庁が出している統計と一致していないというところですから、何でこんなにずれるのか。恐らく、二〇一五年以降に何か変化を加えたのだと思うんですけれども、そこをついていく必要がある。  それから、かさ上げ部分だけに注目していてはだめなんですね。九〇年代が何でこんなに下がるのか、マイナスになっている。内閣府が公表している資料を見てもその点に関する分析がないものですから、原因がわからないんですね。この点を追及した方がいいと思います。  以上です。

○本多委員 ありがとうございます。しっかりと、これはまた先生からも御示唆をいただきながら、まだまだこれは、残念ながらアベノミクス偽装疑惑なんですが、非常に私は重要な指摘を先生はしていただいていると思いますので、引き続きしっかりと追及していきたいと思うんですね。  ただ、ちょっとそれに合わせてなんですけれども、安倍政権は今も六百兆円のGDP目標をおろしていないはずなんですが、このかさ上げを行ったら、当然この目標をアップをすべきだと私は思うんですけれども、先生はいかがですか。

○明石公述人 おっしゃるとおりです。六百兆円というのはGDP改定前の目標値ですから、GDPを改定した後は、二〇〇八SNA対応部分だけでもあれだけ上がるわけですから、六百兆円じゃなくて、もっと目標を上にすべきだと思います、改定に合わせて。  以上です。

○本多委員 ぜひ、与党の皆さんも、GDPの計算方法を変えたわけですから、いい悪いは別として変えたわけですから、目標もしっかりと上げていただくのが筋だということを指摘をしたいと思います。  それともう一点、僕は先生にちょっと確認をしたい。  この本を読んで、私もなかなかきちんと認識をしていなかったんですが、アベノミクス以降の経済の特徴の一つとして、物価が大変上がっているということを先生は御指摘をされています。私は、約束されたインフレ目標率が達成できていないので、そっちの方にばかりどうも注目をして、余りその実感を持たないできたんですが、先生のこの御指摘は私はすごく重くて、アベノミクスが実は物価を上げる方に影響を及ぼし、国民の生活を苦しくしている、こういう先生の説があるんですけれども、ここもちょっと詳しく説明をいただければと思います。

○明石公述人 おっしゃるとおりで、物価については国民もすごく勘違いをしていると思います。  日銀が物価目標を達成できないので、物価が上がっていないというふうにみんな錯覚しているかもしれないんですけれども、日銀の目標というのは、前年比二%で、かつ消費税の影響を除いているんですね。アベノミクス開始から二%ではないんです。アベノミクス開始から、二〇一八年と二〇一二年を比較しますと、増税の影響も含めますと、物価は六・六%も上がっているんです。  ですから、賃金も六・六%上がっていないと実質賃金は下がっちゃうんですね。年収四百万の人でいうと、二十六万四千円賃金が上がっていないと実質賃金が下がってしまうということになっています。ですから、物価がすごく上がっているということは重要ですね。  以上です。

○本多委員 円安などを引き起こして物価高を引き起こし、そしてそこに賃金が上がっていないという状況で、国民の生活が苦しくなっているということ、先生の説明を聞かせていただいて、私はすごく実感と合っているなという認識をいたしました。  最後に、先生、実は、この統計偽装、アベノミクス偽装とは直接関係ないんですが、金融緩和に関して、異次元の金融緩和に対しても大変危険視をされています。アベノミクスの総括等を含めて、この危険な金融緩和についての御所見をお聞かせいただきたいと思います。

○明石公述人 金融緩和につきましては、まさにそこが一番の問題で、どうやって出口を見つけ出すのか。私は、はっきり言いまして、出口は見つけられておりません。出口を見つけている人はいるんでしょうかと逆に聞きたいぐらいですね。ここが一番の問題です。  今でさえ物価ばかり上がってしまって国民の生活は苦しいんですが、一番問題なのは異次元の金融緩和の副作用の方です。  以上です。

○本多委員 この問題は本当に深刻だと思います。もう進めちゃって、これだけ金融緩和が進んでいるものを、どうやめていくのか、やめられるのか、その議論はしっかりと国会でもしていかなければいけないと思っています。ありがとうございます。  ちょっと三浦先生にも一問質問させていただきたいと思います。  きのう委員部から、先生の、最近、これは月刊誌に書かれた資料を読ませていただきました。  きょうの説明とはちょっとだけ離れるんですけれども、私にとっては非常に関心のある安全保障に関するポイントなので、質問させていただきます。  先生は、「およそ国家で抑止を考えない国はありません。しかし、これに対して「巻き込まれ」の懸念で反論しようとする人びとがいます。「巻き込まれ」の懸念とは、同盟国の戦争や武力行使に巻き込まれてしまう懸念のことで、現在でいえば、米国が北朝鮮の核施設を先制攻撃した場合、日本にある米軍基地や日本の国土・国民そのものが北朝鮮の反撃ターゲットとなってしまうリスクを指します。あるいは、」ここまでのところは、昨年までの状況ではあり得たんだけれども、最近ちょっと低まっているかなと。  ここからはまだあると思っているんですが、「あるいは、米国が台湾海峡において中国と武力衝突し、それがエスカレートしていって米軍基地を置く日本も攻撃されるというリスクです。」と。この巻き込まれの懸念。割と私は巻き込まれの懸念を強く感じる方なので、ここ、ぴくっとひっかかったんですね。  先生、その後に、「しかし、考えていただければすぐに分かるように、現状のリスクはむしろ拡張主義をとる中国や、核武装に加えて挑発を繰り返してきた北朝鮮から万が一攻撃を受けたときに、日本や韓国が見捨てられる懸念の方です。」と。  もうこれ、二つのリスクを比較して、巻き込まれよりも、何らかのことを北朝鮮や中国がしかけてくる危険が高いと。そのときに、アメリカに見捨てられる危険をちゃんと見ろよという、いい御指摘をいただいていると思うんですが、実はここで先生に質問したいのは……

○野田委員長 本多さん、質問時間が終了しているので、簡潔にお願いします。

○本多委員 両方リスクだと思っているんですよ。先生、後者の方が高いと言っているところ、この理由だけ説明してください。  私は両方のリスクがあると思っているんです。だから、両方のリスクに備えなきゃいけないんだけれども、後者の方が高いと先生が考える理由を教えてください。

○野田委員長 三浦公述人、申しわけありませんが、簡潔にお願いいたします。

○三浦公述人 御質問ありがとうございます。  日本で尖閣諸島をめぐる有事を想定したときに、米国が実力で助けに来てくれると考える人の調査もしているんですね。それは、実は一五%に満たないんです。それが年々下がってきているということは、日本国民の民意を見ても、恐らく、核抑止、核の傘は提供してくれているけれども、実際に辺境における、彼らからすると辺境で、我々にとっては辺境ではないんですが、限定的な武力衝突の場合には来てくれないと考える人が非常に多いということですね。これは、韓国でいうと、五五%から六割の人が、年によってぶれるんですが、朝鮮半島有事で米軍が駆けつけてくれると思っているのと好対照をなしています。  それで、どうして巻き込まれの懸念よりも見捨てられる懸念が大きいかといいますと、やはり、我々は利害の同盟を組んでいるわけです。そうすると、米国としては、どうしても日本を助けなければいけないというような、例えばメキシコやカナダにおいて紛争が起こるのとはちょっと違った民意というもの、さめた民意というものが存在します。それを戦略的な判断として上回る、米国の国益のために日本を助けるという判断ができるかどうかというところで、やはり我々は民主的な国と同盟を組んでいる、その中で、日本は、実は、見捨てられ、巻き込まれだけじゃなくて、フリーライダーという懸念が同盟には存在するんですが、それは、米国がフリーライダーだと我々を見ているというところの形で具象化されているんですね。  そうすると、やはり民意上は、それに立脚する政治家としては、ますます日本を助けてあげるという気がなくなるということで、自主的、主体的な努力をしなければ、恐らくその傾向はどんどん高まるんではないかなと思っておりますし、北朝鮮と劇的に融和したトランプ政権の態度を鑑みるに、巻き込まれるというのが米国主導で起きる懸念が非常に低まったということがやはり近年の変化だと思います。  ありがとうございます。

○本多委員 終わります。ありがとうございました。