決算行政監視委員会第2分科会 2004年(平成16年)05月12日




5月17日国会初質問。
本多平直、石破茂防衛庁長官とイラク問題で議論を行う。

○今野主査

 これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。本多平直君。

○本多分科員 民主党の本多平直でございます。四月に繰り上げで当選をさせていただきまして初めての質問になりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  イラクに自衛隊が派遣されておるわけでございますけれども、最近、サマワでオランダ兵が殺されるという事件、そしてまた、近々には銃撃戦があったというニュースも聞いております。これらの事案について、防衛庁としてどう把握されているのか、長官としての現状の把握をお教えいただければと思います。

○石破国務大臣

 御指摘のように、サマワにおきまして今先生がおっしゃいましたようなことが起こっておりますことは、私ども承知をいたしておるところでございます。

 どのように認識をするかということでございますが、サマワ全体の治安が極度に悪化をしたとか、そのような認識は現在有しておるところではございません。私どもといたしましては、今後とも、情勢を注視していかねばならない、そしてまた、活動並びに安全の確保については細心の注意を払い、万全を期していかなければいけないというふうに考えておりますが、現在起こっておりますことが、サマワの治安が悪化をしたとか、そのようなことだという認識はいたしておりません。

 いずれにいたしましても、適切な情報の把握に努め、今後とも努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。

○本多分科員

 ただいま長官の御答弁、前半は極度に悪化したとは思っていない、後半は悪化したとは思っていない、若干違うんですけれども、私たち一般から見ますと、新聞報道によりますと、治安のために行っているオランダ兵が殺される、もしくは銃撃戦は一時間だと新聞報道では書いてあったんですが、その辺の事実もおわかりであれば教えていただきたいんです。一時間にわたって銃撃戦がある状況は、極度とまではおっしゃらなくても結構ですけれども、治安が悪化しているというところだけはしっかりと確認をしたいと思うんです。

○石破国務大臣

 それは、先生、私ども、例えばイラク警察の発表でありますとか、いろいろな情報に基づいて、もちろん現地からの報告もございます。それが一時間なのか、四十分なのか、一時間十分なのか、これは本当に正式に見てはかったわけではございませんので、きちんと何時間ということは申し上げられる状況にはございません。

 ただ、先生が御指摘になりましたように、治安を維持しているオランダ軍というものと人道復興支援に当たっている自衛隊というのは、遭遇する場面というのが違うのだということはまず認識をしなければいけないと思っています。

 そして、例えば、これはきちんと確認をしたわけではございません、あくまで報道によればというお話でございますが、サドル・グループが武器を持って立てこもった、あるいはそこに大勢の人が集結をした、それを放置するということがあれば、さらにさらにサマワの治安は悪化をするということも想定をされるわけです。それがそうならないようにオランダ軍がきちんとした対応を彼らの任務に基づき行ったということを、それをもってして治安がさらに悪くなったと言うべきか、それとも、そういうことになったので今後そのような活動というものはより下火になるというふうに評価をすべきなのか、今の時点におきまして、先生御指摘のように、最初に極度に悪化したと、その後悪化したというふうに言いました。それは別に意図的に使い分けたわけではございません。

 今後とも情勢を細心な注意を持って見ていかねばならないということでございまして、今の時点で軽々な判断をするには、私はまだ十分な情報もないし、そのような立場にもおらないということだと思っております。

○本多分科員

 なぜそこにこだわるのかよくわからないんですが、治安の悪化というのは、例えば活動の中止の条件でもございませんし、一般論として普通に考えて、今まで割と平穏に、あのような事件がなかったところにオランダ兵が殺される、または単発的に銃が鳴ったという感じではなく銃撃戦のようなものがあったということは、私は治安が悪化したと考えておりますが、長官からそのような御答弁をいただけないという、私はその認識自体がやや甘いのではないかということを御指摘させていただきたいと思います。

 その次に伺いたいと思うんですけれども、またこれも新聞の報道なので、確認のためにお伺いをしたいと思います。

 内閣法制局の方から、この復興支援法では、戦闘地域かどうかということ、大分議論を民主党もさせていただきましたけれども、その戦闘かどうかという定義のところに、その主体は国または国に準じる者というふうなことを御答弁いただいて今まで来ているんですけれども、現在イラクで活発に活動しております、特にサマワでも今回の銃撃戦の主体になったのは、その末端と言われていますけれども、サドル師派というグループ、これは、これも新聞報道で申しわけないんですが、十万人にわたる民兵組織があるという組織だと聞いておりますけれども、この者たちについて内閣法制局さんは国に準じる者ではないかという議論をされた、それが政府内で議論を呼んでいるという報道がありました。この事実はどうでしょう。法制局じゃなくて防衛庁長官、防衛庁から伺いたいんです。

○石破国務大臣

 そのような報道は承知をいたしておりますが、福田当時の官房長官に対しまして法制局からそのような報告をされたということは全くないというふうに存じておりますし、したがいまして、当然のことでございますが、私に対しましても内閣法制局からそのような考え方が伝えられたということは全くないわけでございます。

○本多分科員

 了解しました。  それでは、法制局さんも、そういうことでよろしいかどうか、確認をお願いします。

○山本政府参考人

 お答え申し上げます。

 全くそういう報道は事実ではございません。私どもは、法律の審査、解釈を職務にしておるわけでございますけれども、本件は全くイラク特別措置法の運用の問題でございまして、私どもはイラク国内でどういうことが起こっているか、そういう事実を知る立場にございません。そういう意味でも、この報道は誤りだというふうに申し上げたいと思います。

○本多分科員

 その事実関係は、それはそれということでいいんですけれども、そうだとすると、改めてちょっと伺いたいんです。

 このサドル師派というようなグループ、十万人という数が、それは正確に把握できるかどうかは別としまして、軍事的な問題での第一人者である石破長官は、これは国に準じる者かどうかというのは、お考えはどうでしょう。

○石破国務大臣

 それは従来答弁を申し上げてまいりましたとおり、かくなるものは国であり、かくなるものは国に準ずる組織でありということについて、確定的にこうだというような客観的な物差しが存在をしておるわけではございません。それが国に準ずる組織であるかどうかというときには、その組織性であるとか継続性であるとか計画性であるとか国際性であるとか、そのようなものを総合的に判断をすることになるのだというふうに答弁をいたしております。

 これは私自身が思っていることでございますが、仮に、国というイメージをするとすれば、やはり領土というものがあるのだろう、そしてまた統治機構というものがあるのだろう、少なくともそれに従う国民というものがあるのだろう。例えて言えば、国ということをイメージするときにそういう要件が普通頭に浮かぶわけでございます。その場合に、それは国に準ずる組織というような見方をする一つの物差しにはなり得るであろうと思っています。それだけに限るわけではございません。

 さて、では、このサドル・グループなるものはいかなるものかということになりますと、さてどうでしょうねということになるわけでございまして、これは憲法によって禁じられておりますのは、国際紛争を解決する手段として、武力の威嚇、武力の行使を行ってはならないということになっておるわけでございます。これが九条でございます。

 そうしますと、こういう規定はすべてそれから出ているものでございまして、さて、このサドル・グループなるものはそういうものに当たるのか、憲法というものに抵触をするようなそういう主体になるのかと言われれば、現状におきまして、そのようなことは全く考えられないと思っております。

○本多分科員

 わかりました。

 そうしますと、国というのはもちろんわかるんですけれども、この議論で、イラク復興支援法の議論の中で、戦闘の定義のところでこの議論になっているわけですが、長官が国に準じる者というふうにおっしゃられたのは、私はちょっとイメージがわかないんですよ。

 つまり、例えば台湾の問題なんかを話すときに、正式に承認していない状態で、国に準じる者なのか、台湾がそういうのに当たるのか、例えばパレスチナのような状態を言うのかというのは何となくわかるんですが、今回の話にそれは出てこないような気がするんですが、いかがですか。

○石破国務大臣

 それは、先生も議員になられる前、いろいろな政策立案に携わっていらっしゃいましたので、あるいは私も御説明する機会があったかもしれませんけれども、例えて申し上げれば、フセインの残党がお家再興のような形で集まって、かつての内務大臣とか、かつての石油大臣とか、別にそういうものに限るわけではありませんが、そういう人たちが集まってお家再興だ、例えて言いますと、ポル・ポト派みたいなものがそれに当たるのかもしれません。私はポル・ポト派が国に準ずる者だと言っているわけではありませんが、イメージをするとするならばですね。

 つまり、それが統治機構のようなものを有し、そしてまたそれに従う国民というのか民衆というのか、そういうものを有し、そして活動が計画的であり、組織的であり、継続性を有し、なおかつ国際性を有している、すなわちそういうグループに対して、ほかのどこでもいいのですが、国際的な支援、バックアップのようなものがある、そういう場合には国に準ずるということも判断としてはあり得る。別にそう断定するわけではありません。ただ、イラク特措法のときに、どういうものだという御指摘をいただきまして、例えて言えばということで今のような御説明をしたと思っております。

○本多分科員

 なるほど、フセイン残党のお家復興とかポル・ポト派というイメージでわかったんですが、私も確かにサドル師派というものについてまだ十分な知識を得ているわけじゃございませんので、今後また、私は今の段階では長官の御答弁、そういうふうに受けとめますけれども、我が党としても検討して、今までこの答弁でずっと、いただきながら、戦闘地域の議論をしてきたわけですから、本当にこれでいいのかしっかりと議論させていただいて、また場合によっては追及をさせていただきたいと思っております。

 さて、もう一つ、確認事項ですが、これもずっと、今の御答弁で当然わかっているとおりなんですが、念のため、サマワ周辺、現状でも戦闘地域ではないということでよろしいですね。 ○石破国務大臣

 この法律の仕組みは、これは何度も先生方から御質問をいただいて、私の答弁が多分十分ではないので御理解をいただけないのかと思っておりますが、イラクというものを、はいここは戦闘地域でございます、はいここは非戦闘地域でございますというふうに二つに分けてどうなんだという評価をすることがこの法律によって求められておるわけではございません。

 この法律によって求められているものは、イラクにおいて自衛隊が活動する地域は非戦闘地域であるということが求められておるわけでございまして、先生おっしゃいますように、仮に非戦闘地域でないということになりますれば、これは当然、法律に沿いました対応をするということになります。

○本多分科員

 わかりました。

 私も、法律の議論に入っていくとそういう解釈になるんだろうなと思いますので、その解釈にならざるを得ないのかなと、若干疑問は持ちながらも、そう理解をしておこうと思います。

 そこで、次は、ちょっときちんと通告したかどうか定かではないんですが、石破長官に直接これは伺っても大丈夫な質問だと思いますので、軍事組織の責任者としての一般論として伺いたいんです。

 私たち民主党はそもそも派遣に反対だったわけですが、だから、撤退ということに関してはまたタイミング論とかいろいろありますが、私はもともと派遣にも強く反対だった方ですし、そういう論理からくると、いろいろな状況を見て、できるだけ早く、方法を見て、機を見て撤退をすべきだという、それは野党でもありますし、この法案にも反対をした立場ですから、そうではあります。  ただ、このことを全くいいことだと思って推進をされているお立場からも、状況においては活動の中止、これは法律にも定められておりますし、場合によっては、大きな変更によっては撤退ということも選択肢にはあると思うんですが、それは当然そういうことでよろしいんでしょうね。

○石破国務大臣

 これは法律をお読みいただければおわかりになりますとおり、いろいろな対応がございます。そこには一時休止をするというものもございます、中断をするというものもございます。先生が先ほど御指摘になりましたように、これは非戦闘地域という要件を満たさないということになりますれば、実施区域の変更等々を行わなければなりません。それはいろいろな対応というものはございます。

 そして、これは非常に一番ハッピーな事例でございますけれども、自衛隊が行かなくたって、もう水も十分供給されるし、学校も直ったし、病院も十分さということになれば、これはめでたく撤退ということに相なるわけでございます。

 そのほかの場合に、いろいろなケースが考えられるわけでございますけれども、それをだれが決めるかということになりますと、これはもう十年前のPKO法の議論のときもあったのですが、これは下がってよろしいでしょうかみたいなことを東京に電話をかけていいとか悪いとか、そのようなことを防衛庁長官が判断するなんて、そんな話にはならないわけでございます。

 現状はどうなのかということは、当然指揮官が見て、法律にのっとった措置を行うことになるわけでございますが、実施区域の変更等々の措置というのは防衛庁長官が行うということになっております。あるいは先生のお言葉をかりれば、撤収、撤収といっても、撤収という言葉はこの法律に書いてあるわけではございません。どういう形になるか、それはいろいろな形がございましょう。基本計画をどうするとか、いろいろな形がございますが、その判断というものは政府全体として行うことになるわけでございます。

○本多分科員

 わかりました。

 もう少し一般論として伺いたいんですが、私も戦争というものの、これは戦争じゃないのはわかっているんですが、軍事組織的なもの、自衛隊を出すときの決断も非常に重い決断があったと思うんですね。特に長官は直接自衛官の皆さんの命を守る立場におられるので、それは本当に重要な判断だったと思うんですが、一般的には、あそこでいいことをしているという皆さんの立場からすると、それは多少危険であるとか日本の法律がどうであるとか、いろいろな事情があるにしろ、引くという判断もまたこれは国際的な立場、それからアメリカの視線、それからイラクの方、せっかく期待していたイラクの皆さんの声、そういうことから非常に重い判断になるということを、一般論として、私と共感いただけるかどうか。

○石破国務大臣

 それは一〇〇%共感をいたします。

 それはもう、おっしゃいますように、例えば五月の六日に私どもの宿営地に自衛隊支援のデモというのがやってきた。要するに、日章旗を振って、正直な日本人の皆さん方とともに、サマワの再建のために我々一緒に働くぞというデモがやってきた。そして、サマワの人々の期待というものも非常に高い。ですけれども、これはどういうことかといいますと、自衛隊はもっと病院を直してほしい、もっと学校を直してほしい、もっと道路を直してほしい、ところが、迫撃砲を撃つとか、人質をとるとか、手投げ弾でオランダ兵を傷つけるとか、そういう者がいるので自衛隊はきちんと活動ができないんじゃないか、こういうような、不逞のやからと仮に申し上げるとするならば、それはサマワ市民の敵であり、ムサンナ県民の敵なのだというようなことを彼らは私どもに言ってくるわけでございます。その期待は裏切りたくない。

 そして、イラクに自衛隊を出しました幾つかの理由の中に、日米同盟の信頼性、もちろんイラクに出すのに日米安保条約に基づいて出しているわけではございませんが、日米安全保障体制の信頼性向上ということもございます。

 したがって、そこは非常に悩ましい判断だという意識は先生と共感をするものでございます。

 しかしながら、他方、法律の要件というものを具備しないということになりますならば、これは、私ども法治国家で、日本はこのイラク特措法に基づいて自衛隊をイラクに送っております以上、それは当然その法律に従った判断をなさなければ、これは法治国家のていをなさないというふうに思っております。

○本多分科員

 ありがとうございます。

 今私が申し上げたのは、出す判断も難しいけれども、例えば、引くということがもしあれば、それは難しいということの意味は、一般的には世論とか、例えば自民党の議員さんの立場からすると、そのままにしておく方が判断はしなくていいわけですよね。だから、その最終的な厳しい判断は、ぜひ長官がさまざまな状況を常に持ちながらしていただかないといけないという思いで申し上げていますので、そのお立場だということを理解していただきたいという意味でございますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 ここからは若干、初めての質問で、揚げ足取りみたいなことをしたくないんですが、私、この後段でしようと思っていたことが今長官のお言葉で出てきたので、申し上げたいと思います。

 結局、私たちの国が、例えば日本本体もテロに遭うかもしれない。だから、この間の人質事件のようなことも現に起こった。そしてまた、自衛隊の方々も命の危険をさらしてやっているのがこの復興支援活動なわけです。当然、イラクのサマワの方々がどう思っているかということも、普通、日本がやっているODAもいろいろあります。せっかくお金をかけてやったのに評価されていないとか、そんな話はよくあるんですが、それ以上に、日本国として、本当に、東京でテロが起こるというような話さえあるようなことを、かけてやっていることなんですから、やはりサマワの皆さんにはきちっと感謝をしていただかなきゃいけないと私は思っております。

 ところが、先日の夜のTBSのニュース報道なんかを見ますと、非常に批判的な意見も厳しく出ていたんですね。期待していたのと違う、電力なんかをもっと期待していたんだとか、そういうようないろいろ厳しい意見。当然現地にはいろんな声があるでしょうし、報道の仕方というのも、長官もいろいろ御存じのとおり、場合によっては、あの番組がそうだというわけでは決してございませんけれども、いろいろ取り上げ方でというのもあると思うんです。

 ただ、私、長官があえて自衛隊支援のデモが起こったんだよとおっしゃっているので、最近この一連の流れで、そこでちょっとあえて申し上げたいんですが、例えば長官なんか非常に多分お怒りになっていると思うんですけれども、いろいろ、日本から自衛官の方が外国へ行くときとか、船で邪魔するデモとか来るじゃないですか。ああいうのというのは、ではその地域の多数派かというと、私の立場からいうと、残念ながら決して多数派じゃなかったりするんですね。決して、デモがあったからその地域ではそういう歓迎があるとか、みんなが自衛隊のどこか船が出ていくことに、入港に反対しているとか、そういうわけじゃない例は、長官は逆の立場から山ほど御存じなのではないかと思っているんですね。

 ですから、イラクの方がどう思っているかというのは、これは外務省の所管になってくるのかもしれませんが、長官、その論拠としてあのデモだけを言われても、テレビ番組にもいろいろあるけれども、デモと言われてもなという感想を持つんですが、いかがでしょうか。

○石破国務大臣

 済みません、私はデモをもってしてすべてのサマワ市民がなどということを申し上げているわけではありません。  これは、世論調査もいろいろありますから、これがいいとか悪いとか、だれもわからないことですが、例えば四月に、向こうで、アラビア語の新聞アル・サマワというのがあって、サマワのローカル紙かと思いますが、自衛隊の駐留を望むということに対して、望むよとおっしゃった方は、アンケートに答えられた方の中で四九%であったということになります。ノーアンサーとかそういう方がどれぐらいいらっしゃったか存じません。



 ただ、先生、私、この間佐藤一佐が途中で一回帰国をいたしました。そのときも、まさしく先生のおっしゃるのと同じことを私は聞いたんです。本当はどうなんだということを聞きました、やはり実際に行っている自衛官から聞かなきゃわかりませんから。そのときに、サマワ市民の自衛隊に対する期待は、それは当初ほどではないが、でも依然として高い。

 それはなぜなのかといえば、やはり行く前から、私どもは、イラクの文化、イラクの宗教、イラクの民族、それに対する尊敬の念を持とうと。全部なんかとてもわかりませんが、例えて言えば、いろいろな礼儀についてもきちんと勉強していこう、日常会話の簡単なものはできるようになろう、決して見下すような態度をとることはやめようということで、隊長、郡長以下一人一人に至るまでその気持ちでやっております。道路を直しますときも、学校を直しますときも、あるいは水を給水いたしますときも、彼らのニーズにこれが沿ったことなのか、不公平感が生じないのかということには本当に細心の注意を払っております。

 私は、日本に対する期待が高いというのは決して偶然でもなく、日本はお金持ちだから、来ればいっぱいお金が降ってくるとか、そのことばかりだとは思いません。やはりきちんとした配慮、違う文明、違う宗教、違う民族に対する尊敬、そしてまた何が彼らの心に響くものなのかということを今後とも努力していくことが安全確保につながるのだというふうに考えておる次第であります。

○本多分科員

 今、現地の自衛官のお話をいただいたので、改めて申し上げておきたいんですけれども、私は、今回の政府の決定ということに関してはいろいろ意見が当然あるんですけれども、現場で、行った以上任務をきちっと遂行しようという思いでやっていらっしゃるその中で、今長官がおっしゃったような、イラクの方との交流をどうしようとか、文化をどう尊重していこうという工夫をされている自衛官の皆さんのさまざまな努力は本当に多としたいと思いますし、当然自衛官の皆さんの無事を願っている立場は長官と共通だと思っていることだけは御理解をください。

 ただし、やはり、私、これもまたしっかり軍隊組織論みたいなものというのは一回勉強したいと思っているんですが、長官は御存じかもしれませんが、先ほど言ったように、押すより引くのが難しいなどとよく言われるのと同時に、トップに情報が上がらない、それがいろんな判断の間違いになるということはあると思うんですね。

 もちろん、現場の方が一時帰国されて長官が御意見を聞くというのは大事な情報源ですが、それだけだと長官の判断が、いろんな立場があるわけですから、部下というのは。ですから、もちろんそれだけで判断をされているとは思いませんけれども、例えばこの間私が見たTBSのニュース番組も、現地にまで行っているのは何人かしかジャーナリストがいない方が取材を、まあ彼も、きちっとした警護がなく今のイラクで活動するということは、一応きっと命がけでしているんだと思うんです。彼の情報なんかは本当に厳しいの一辺倒だったので、私も本当にそうかなと。あのテレビ、ぜひ長官に見ておいていただけるように役所の方にお願いしていたんですが、見られて、どうでしょうか。

○石破国務大臣

 それは、これはどっちの立場に立ってもそうなんですが、テレビに出る方と全く違う意見の方もあるわけで、テレビを拝見した限りは、印象としては、本当にこうなのかな、私の聞いていることと違うがなという印象を持ったことは事実でございます。テレビの編集方針等々について私が物を申し上げる立場には当然ございません。

 ただし、先生御指摘のように、本当に、現場の情報というものがきちんと上がってこなければ、それは判断を間違うということが多くあるのだろうと思います。そして、順風のときの判断というのは多少間違ったってどうってことはありませんが、そうでないときの判断を間違えると、これはとんでもないことになりかねないということは御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、今回、イラクに派遣をするに際しましては、その現場の情報というものがどれだけ正確に、どれだけリアルタイムで防衛庁に上がってくるか。陸上自衛隊、航空自衛隊が出ておるわけでございますが、陸上自衛隊、航空自衛隊とばらばらに入ってくるのではなくて、それがきちんと防衛庁全体として認識できるような、統合幕僚会議もあるいは内局も、そして政治の責任を負っております私や副長官にもきちんとした形で入るように。

 一番いかぬのは、伝言ゲームなんかやっているうちに本当のことと違うことが上がってくる。最初はAであったものがBになりCになりDになり、ひどいときになると全く結論が違っているというようなことも世の中にはあるわけでございます。そのためには、精神論だけ言っていても仕方がございませんので、どれだけ通信の手段を確保するか、回線を確保するか、そして、その情報が伝わってきたときにどのようにして政府部内できちんとした認識を共有するか。

 情報というのは、ばらばらと上がってきて、みんなが違うものを持っていてもしようがないわけでございます。情報は、収集の体制とともに、分析、評価、そして配付、決断、こういうことになるわけでございまして、それぞれの過程において誤りがないかどうかを毎日きちんと精査するということが、先生御指摘のような誤りを招かないための我々がとるべき方策かと認識をいたしております。

○本多分科員

 長官と、最終的に自衛隊をどうするかというような大きな考え方では違う点もあるかもしれませんが、そういう運営に関しては、今、日本国の責任者は長官ですので、ぜひともそこのところは、今おっしゃったようにしっかりと情報を得て、適時的確な判断をしていただきたい。

 そして、私先ほど申したオランダ兵の事件と銃撃戦のみではなくて、やはり国民の皆さんにとって大きく印象に残っているのは、あの刑務所の虐待事件がまだ世界的にも大きなことになっています。私は今回その感想は伺いませんけれども、あれによってもやはり本当に大きく、もちろんサマワだけではなく、イラク全体の国民の感情というものが、私は、長官の、米軍と当然我々は一体の活動をしているわけではないという御説明は法律的には理解していますが、そういう問題ではなくて、イラクの一般の方やアメリカに反感を持っている方からどう見えるのかという問題ですから、そういう意味では、自衛隊が今、そして日本が非常に厳しい視線に、私たちの意図するところとは別に置かれざるを得なくなっている状況はあると思いますので、いろいろな判断を常に持ちながら対処をしていただければありがたいと思っています。

 答弁ありますか。

○石破国務大臣

 先生のおっしゃるとおりでございます。一体になってやるわけではございません。その点もこの間随分と確認をいたしました。こういうことを常日ごろやっておるところでございます。

 私は、ほかの国がいいとか悪いとか、そういうことを申し上げるつもりはありませんし、日本だけがいい子になればいい、そういうものだとは思っていません。しかしながら、日本は違うよねということ、要するに、決して見下さない、我々の文明にきちんとした尊敬の念を持ち、我々がやってほしいと思うことをやってくれるという認識を持ってもらうということはとても大事なことなんだと思っています。

 しかしながら、他方、例えばサマワにおいては、オランダ軍が本当に命を張ってといいますか、そういう場面に身をさらして治安を維持している。治安が維持できて初めて人道復興支援ができる、人道復興支援がうまくいって治安がよくなる、それはコインの裏表だと思っているんです。私は、日本だけがいい子になろうとか、そういうことは思ってはいけないのだと考えています。

○本多分科員

 長官、ありがとうございます。

 それでは最後に、会計検査院さんに一言質問させてください。

 一般論として、こういう海外での活動、今回の防衛庁さんの活動、それと、軍事的には非常に秘密が多いという状況があると思うんです。それはもう当然こういう状況ですから仕方ない部分があるんですが、伴って、会計検査には困難性が当然生じているんだろうと思うんです。しかし、こういう状況だからといって、国家の予算を使ってやっている行動ですから、会計検査は困難性があるからこそよりきちっとしていかなきゃいけないと私は考えますが、そこのところを御確認いただきたいと思います。

○増田会計検査院当局者

 お答え申し上げます。

 テロ対策特措法あるいはイラク復興支援法に基づく自衛隊の活動による国費の支出につきましては、私ども会計検査院としても、重大な関心を持って今まで検査を実施してきております。

 確かに、今おっしゃいますような検査の困難性はありますけれども、今先生がおっしゃった趣旨を十分念頭に置きながら、今後しっかりした検査を行ってまいりたいというふうに思っております。

○本多分科員

 以上で終わります。

○今野主査

 これにて本多平直君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての質疑は終了いたしました。