衆議院-安全保障委員会 2004年(平成16年)12月01日
「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案」に対する質疑を行いました。
○本多委員
民主党の本多平直でございます。 きょうは、せっかく我が党を含め法案を提出しております。まずは提出者に、提出理由はるる述べられているわけですけれども、特に、一生懸命審議をしていってもなかなか政府側からかみ合った答弁をいただけない大変悔しい思いをしてきたこの問題に関して、そういう思いを含めて、提出者のこの提出への思いをお聞かせいただければと思います。
○末松議員
先ほどから提出理由についてはいろいろと述べられていますので、私は思いを述べさせていただきます。
イラク戦争を始めたことそのものについては、大義がないとかあるいは国際社会の一致した合意がなかったとか、いろいろあります。また、紛争下で自衛隊を派遣するという憲法上の問題、こういったものをそもそも論として私ども持っております。 ただ、今考えなきゃいけないのは、ずっと、ロケット砲も八発ぐらい自衛隊の方に、いろいろと迫撃砲も受けて、安全確保義務も本当に果たし得なくなった。それを政府の方が、まだ非戦闘地域だというような虚構の中で説明をしているということ。これはやはり私どもとしてきちんと、十二月十四日に基本計画が終わるわけですから、そこに対して区切りをつけるということが一番重要だろうと思います。
先ほど申し上げましたけれども、政府が、じゃ、いつ撤退するんだということを明らかにしていない。これからまたかなり状況が厳しくなって、自衛隊の方々にもし人的被害なんか起こったら、そこで逃げ帰るのか。あるいは、オランダ軍が来年三月に撤退をした後、今度はイギリスに大きな負担が、治安の負担がかかるわけですよ。逆に日本の自衛隊がいるがためにそんな負担が出てくる。こういうことも含めて、はっきりと撤退の時期を示さなきゃいけないということがあります。
私どもは、国内法に沿って、先ほど丸谷議員の御質問がありましたけれども、私たちはできる範囲でできる協力をする、みんな派遣国はそうやっているわけですよ。我々も国内法に従って正々堂々とこういう形で撤退をすべきだと言っているのでございます。
○本多委員
ありがとうございます。 当然のことながら、私の思いも一緒でございまして、撤退を求めていくという気持ち、そしてそのために今あらゆる手段を、法律の面からも、そして実態面での議論からも進めている、そういうことだと理解をしております。
そういった観点から、実は、きょうは政府の方に、もう少し法律の議論をさせていただきたいと思っています。 それで、前回のこの委員会で、ファルージャの問題が町村大臣との間で、特に神風委員との関係で論争になりました。そこで大変政府の答弁は迷走いたしまして、せっかく神風委員が時間をかけて一生懸命質疑をして、ファルージャは戦闘地域ではないという町村大臣の答弁を引き出したわけですけれども、それを結果としては撤回して、どちらでもないという立場に戻られたわけです。
ここは、理事会でもそういう報告をされたので、大変遺憾なことですけれども認めたとして、この議論の中で、町村大臣は、ファルージャの武装勢力は国または国に準ずる者ではないとここでも言っているんですね。こちらの方もあわせて撤回をされているのかどうかをお答えください。
○逢沢副大臣
自衛隊が人道的復興支援を行う、それはいわゆるイラク特措法に基づいて派遣がされているわけでございます。その要件は、言うまでもないことでありますけれども、非戦闘地域においてのみ自衛隊の活動が許される、また、そこで展開をされる。それは、現に戦闘が行われていないということ、そして、実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる、そういう地域であるということを何度も確認させていただいているわけでございます。
したがって、自衛隊が活動している地域においては、現に戦闘が行われていない、そして、計画をしている活動の期間を通じて戦闘が行われることがないと我々は判断をしている、認められているということであります。
したがって、この法律に基づいて言えば、国あるいはまた国に準ずる組織によるいわゆるイラク特措法によるところの戦闘行為は行われていないという判断に立っているわけでありまして、あくまで、自衛隊が活動を行うことを想定する、あるいは行うことを計画する、その地域がどうであるかという判断をこの法律は要請しているというふうに私どもは判断をいたしております。大臣もそういった趣旨に基づいて答弁をさせていただいているというふうに承知をいたしております。
○本多委員
副大臣には、今お答えをいただいているとは認識できません。 町村国務大臣の答弁、もう一回読み上げます。今申し上げたように、法律の定義を私は述べたのであって、ファルージャで行われている戦闘の相手方は国または国に準ずる組織ではないということだけを申し上げたのですと。
つまり、戦闘地域の話に関してはぼかそうが撤回されようが勝手ですけれども、ここだけは確認をしたいんです。ファルージャでアメリカやイラクの暫定政府が戦闘している相手は国または国に準ずる組織ではないということだけを、これだけは、町村大臣は申し上げたと言っているので、これも含めてきょうの理事会で何か勝手に撤回をされるのか、ここは認めていただけるのか、その確認をさせてください。
○逢沢副大臣
先ほど申し上げたとおり、あくまで我が国がつくらせていただいたイラク特措法に基づく、その判断によって活動を行うわけでございます。
したがって、今委員御指摘の点について、その点も含めて、大臣は誤解を与えたという意味で撤回をするという趣旨を申し上げさせていただいた、そのことをきょうの理事会でも確認させていただいたというふうに承知をしております。
○本多委員
こういう非常に大事なことを勝手に理事会で撤回されて、私たちにも伝わるんでしょうが、神風委員はこのことだけに絞って一生懸命議論したわけですよ。それに関して、大臣がこういうふうにはっきり言ったことを勝手に撤回されて、全然議論が進まない。
私は、そもそもこの法律、皆さん、与党の方もおかしいと思っている方は多いと思うんですけれども、非戦闘地域の話がおかしい以上に、また、この国または国に準ずる者というその下にある定義も全く今のイラクの実情にはそぐわないものになっている、これは非常に問題だと思うんです。もし皆さんがこれを延長したりして、今後も政策としてイラクに自衛隊を残すとしても、私は、こんな法律をもとに残していくというのは本当におかしいと思っているんです。
ですから、皆さんの政策をとるにしても、つまり、国または国に準ずる者、ファルージャであれだけの戦闘が起こっても、その対象が国に準ずる者ではないというような理屈に立つと、ありとあらゆるものがこの範疇に入らない。範疇に入らなくても自衛隊の安全は別な条項で守っているからいいんだと……(発言する者あり)いや、よく読んでいるんですよ。当然よく読んでいるんですよ。しかし、私はそこはおかしいと思っております。
そこのところを、なぜこれだけ、私はもちろんサマワの話を今しているわけじゃありません。サマワの話を議論すれば、今、皆さんの政策にとって非常に遂行が難しくなるわけですね。ですから、サマワの当てはめをしろという議論であれば、皆さんがそこを避けたい気持ちはよくわかって、ごまかされてもいいんですが、なぜファルージャまで避けるのかということは、全然別なところなわけです。
そこで、明らかにわかりやすい例としてファルージャを出したときも、一たん町村大臣は自然な感覚で答弁をしたことをなぜか撤回する。やはりここに、法律上、ここで認めちゃうと、ありとあらゆることが白になっちゃうのか、ありとあらゆることが黒になっちゃうのか、本当に法律が、この条項は憲法を担保するためにあるわけですけれども、それができなくなる、そういう欠陥を示しているものだと、こういう大臣が明言したことを撤回するというような迷走を見ても明らかであると私は思っています。
もう一点、法制局がこの法案をつくるときにこういう議論をしているんです。これはサマワの話に当てはめでしたいと思うんですけれども、まずその前提として一つお聞きをします。 この戦闘地域の対象である主体、国または国に準ずる者というのは、イラクの国内にあるAとBというものが戦闘をするかしないかということだと思うんですけれども、当然、日本の自衛隊が明らかに攻撃された場合は、これは戦闘とみなすんでしょうか、法律の解釈として。
○阪田政府特別補佐人
ちょっと突然のあれで、真意をつかんでいるかどうかあれですけれども、自衛隊が攻撃された場合は戦闘地域かというお話ですけれども、それはまさに自衛隊を攻撃する相手方がどういうものであるかということ、それから、そういうものの組織的な意思に基づく攻撃であるかどうかということによって決まるのであり、非常に極端に言いますと、盗賊団の集団のようなもので武装した者が襲ってきたとしても、それは戦闘行為である、戦闘地域になるということはないということであります。
○本多委員
だとすると、今サマワの宿営地に攻撃が、散発的か継続的かは別にして、かけられているわけです。主体が問題なわけですが、この主体に関しては、さんざん大野防衛庁長官は調査中と言っていますが、まだ調査中なんでしょうか。
○今津副長官
四月から八回、迫撃砲、ロケット砲が宿営地の外あるいは中に撃ち込まれているわけでありますけれども、さまざまな現地の情報を総合的にとってみましたが、国または国に準ずる者という判断はいたしておりません。したがって、戦闘行為とは考えておりません。
○本多委員
国または国に準ずる者と断定していないことはわかりました。 では、そうではないという断定もできているんですか。
○今津副長官
今委員がおっしゃったように、国または国に準ずる者ではないというふうに考えているわけであります。国または国に準ずる団体あるいは組織ではないというふうに受けとめているわけです、さまざまな情報の結果。
○本多委員
まず、その根拠を伺いたいんですが、多分、どうせ出てこないと思いますので、私、確認をしたいんですが、この法律をつくるときに法制局長官はこう言っているんですよ。
そんなことを言っても、とっさの場合に、突然起きた紛擾事態が、相手側が盗賊団なのかあるいは国に準ずる組織なのかわからないではないか、そういう場合、見きわめがつくまでの間、とりあえずその活動は一時休止するなどして活動の継続を差し控えて、それで法律上の要件が満たされていることが確認された後に活動を再開するということであるべきであると考えますと述べているんですよ。
要は、今サマワにしかけられているのを、継続性とか別な要件はまた判断しますけれども、国または国に準ずる者ということに関しては、勝手に、大野長官は調査中だったらしいところから何か結論が出たようですが、もしそれが調査中であるとしたら、活動を一時休止すべきという判断になると思いますが、法制局長官、この答弁は変わっていませんね。
○阪田政府特別補佐人
今の御紹介があった答弁は昨年七月十日の参議院外交防衛委員会におけるものだと思いますけれども、これは御案内のように、その直前、同じ委員会で、当時の石破防衛庁長官も同趣旨の答弁をされております。 そこで言いたかったことは、今御紹介のあったようなそういう運用をすること、それが対応措置の実施を非戦闘地域に限るという観点からイラク特措法八条五項の規定の趣旨に合致するんだということでそういう趣旨の答弁を申し上げているということでありまして、そういう考え方は私どもとしては今も変わっていないということであります。
○本多委員
だとすると、この主体がどうかということが大変大事になると思うんですよ。見きわめがどっちかでついたんだったらそれで判断すればいいんですが、どういう根拠で国または国に準ずる者じゃないと判断しているんですか。
○今津副長官
何回も答弁しているんですけれども、国及び国に準ずる組織だとは判断をしていないということであります。
○本多委員
だとしたら、見きわめがついていないということでよろしいですか。
○今津副長官
何回も答弁しますけれども、先ほど鳩山先生の御答弁の中にもありましたけれども、例えば部族間の中での雇用に関して不満を持っている人がしたらしいとか、国及び国に準ずる者であるというそういう確定した事実はないということなんです。実証されていないということなんです。
○本多委員
そちらの方に確定した事実がないということは、石破長官はアルカイダも国に準ずる者という例に出しているぐらいなんですよ。あんな混乱状態の中で、どこがやったのか犯人を確定しないで、どうしてそんなことが言えるんですか。
○今津副長官
各種の情報を総合的に勘案して、当該行為を行った主体が国または国に準ずる組織とは考えられない、その攻撃の態様も踏まえれば、当該行為が戦闘行為か否かを判断することは可能だ、したがって、そういう判断をしたということです。
○本多委員
いや、戦闘行為とかの話をしていなくて、主体がわかっていないんじゃないんですか。それがだれかわかっていないものがなぜ国または国に準ずる者ではないという判断をされたんですか。なぜという理由と根拠を聞いているんです。
○今津副長官
だから、八回、迫撃砲、ロケット弾、宿営地の外あるいは中。しかし、信管がない場合もありましたね。そういうことで、イラクの警察だとかあるいはオランダ軍の情報だとか、それから、外務省の職員も五人出向しておりますから、そういう情報をとったり、いろいろな状況を考えて、一体だれが迫撃砲を撃ったんだろう、ロケット砲を撃った犯人はだれなんだろう、そういう総合的な調査や情報交換をしっかりとやってきたわけですよ。 しかし、この犯人が、国及び国に準ずる者ではない、ないというか、それであるという、そういう事実がいまだに確定されないということなんです。国及び国に準ずる者であるという確証がないということなんです。
○本多委員
ということは、さっき法制局長官がおっしゃった、見きわめがつくまでの間ということなんじゃないんですか、今のイラクのサマワの状況は。法制局長官。
○阪田政府特別補佐人
今の事象が、先ほど委員が引用された石破長官の言葉をかりれば、謙抑的な運用をすべき場合に当たるかどうかというのは、私ども判断する立場にはないわけですけれども、先日、たしかこれは首藤委員の質問主意書に対して政府がお答えしている部分があるわけです。
サマワにおけるロケット弾等の砲撃をどのように評価するかということに対しまして、「政府としては、法に基づき自衛隊の部隊がイラクに派遣されてから平成十六年十一月十五日までの間、」今はちょっとさかのぼっていますが、その後そういう事件はないというように承知しておりますので、今までと言っても変わりないと思います。「サマーワにおいて法第八条第五項の要件に該当するような状況が生じたことがあるとは考えていない。」
したがって、そこは戦闘行為があったという判断をしたことはないということで、ある意味見きわめができたというふうに認識しているものだと理解しております。
○本多委員
残念ながら時間が来たようなんですけれども、こういう議論を何か神学論争だとかいろいろ言われますけれども、こういう当てはめができないようなおかしな法律を出したのは、政府と与党なんですよ。ですから、私たちはそれに合わせてこういう議論をせざるを得ないわけで、そこのところは、何か非常に自衛隊の方の生命を危険にさらして、さらに派遣の延長をされるようですけれども、されるにしても、こんなおかしな法律でやられたら本当にたまらない。
そして、この延長にしても、撤退の時期というのを、めどを戦略的に持ってやっていただかないと、オランダなんかは、別にアメリカにひんしゅくを買わずに、いろいろ理由をつけながら撤退をうまくしているわけですよ。こういう戦略性を持ちながらやっていただきたいということを強く申し上げて、私の質問を終わります。
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