衆議院-本会議 2005年(平成17年)04月01日




防衛庁設置法改正案(ミサイル防衛など)に対する質疑

    〔本多平直君登壇〕

○本多平直君

 民主党の本多平直です。

私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

私たち民主党は、自民党との間で、イラクへの自衛隊派遣など、対米協力のあり方、程度など、個別の政策では意見が異なることは当然ありますが、専守防衛のための防衛力をしっかりと整備する、日米安全保障体制を維持する、憲法の範囲内でしっかりと国際協力も行うなど、共通の土俵で安全保障を議論できる唯一の政権準備政党です。であるからこそ、今回のミサイル防衛のように我々がいつ運営に携わるかもしれない重要なシステム、法案については、具体的に厳しくチェックし、議論する必要があると考えます。(拍手)

こうした議論の中で、建設的な提案を行い、日本の安全保障をより確かなものにするために、以下質問いたします。

初めに、法案の提出方法について質問いたします。

今回、政府は、ミサイル防衛の手続という、文民統制、シビリアンコントロールのあり方など、極めて重要な論点を含むこの防衛庁設置法の改正案を、陸海空三自衛隊の統合運用、自衛官の定数変更、職員の給与法などと一体として提出してきました。慎重な審議のためにも、少なくともミサイル防衛関連の部分は別の法案として提出すべきだったと考えますが、このような提出方法をとった理由をお答えください。(拍手)

次に、この法案の前提であるミサイル防衛そのものについて、十一点質問いたします。

民主党は、さきの総選挙、参議院選挙の政権公約、マニフェストで「弾道ミサイル防衛については、その必要性を踏まえ、費用対効果など総合的観点から検討を進めます。」と述べ、専守防衛の観点から、その必要性については十分認識しています。しかしながら、現在、小泉内閣が進めるミサイル防衛については、自民党の宮沢元総理大臣までもが、昨年末の新聞のインタビューで、海のものとも山のものともわからないと述べられるなど、その実効性、またコストの観点からも、多くの重大な疑念が指摘されています。

まず、実効性の観点から、日本の全国土をきちんと守れるのかという問題があります。四隻のイージス艦から発射され大気圏外でミサイルを撃ち落とすSM3について、イージス艦には長期の整備期間も必要ですけれども、常に日本全土をカバーできるのか、明確にお答えください。

また、SM3で撃ち漏らしたミサイルを地上近くで迎撃するPAC3は、三つの部隊のみに配備され、発射を事前に探知し、適切な間隔で発射装置を設置して、ようやく首都圏とあと二つの地域の半径数十キロメートルの範囲を守れるのみです。首都圏以外の二地域はどこですか。中京圏、北九州圏とも想定されますが、明確にお答えください。

この三地域のみを防衛する理由と、こうした地域の限定について国民の理解を得られるとお考えでしょうか。お答えください。この範囲に入らない選挙区の議員の皆さんも、有権者の皆さんにきちんと説明ができるのかどうか、ぜひお考えいただきたいと思います。(拍手)

さらに、高速で飛んでくるミサイルに本当にきちんと当たるのかという疑念、どれくらいの迎撃率があるのかという疑問もつきまとったままです。

先日の本会議で、我が党の前原議員の質問に対して、小泉総理大臣は、どのような兵器システムでも百発百中を保証することは難しいと思っておりますと答弁されました。小泉総理お得意の論点ずらし、開き直りのふざけた答弁だと思います。だれも百発百中なのかを聞いたわけでも、百発百中でなければ導入するなと言っているわけでもありません。兵器の性能には秘密もあって当然ですが、一兆円の国税を導入するシステムです。

私も読ませていただきましたが、石破前防衛庁長官は、最近の著書「国防」の中で、迎撃率を六、七割以上と書かれています。迎撃率の想定について、この程度の御説明は当然いただけると思いますが、SM3、PAC3、それぞれどれくらいの迎撃率を想定されているのか、明確に数字でお答えください。(拍手)

その他にも、迎撃を妨害するおとりの物体や同時に多数のミサイルを発射された際の対応など、数多くの問題が指摘されています。これらへの対処はどうなっていますか。

また、ミサイル防衛は、迎撃をすり抜ける技術の競争となり、軍拡競争を誘発しかねないとの指摘があります。いかがお考えでしょうか。ミサイル防衛システムそのものの輸入や発射情報の提供など、ますます対米依存が深まるとの懸念については、どうお考えでしょうか。

次に、費用についてです。

政府は、十年間で八千億円から一兆円と見込んでいます。私は、これにとどまらないのではないかと懸念しています。防衛庁は、過去、戦闘機などの開発において、当初の見積もりを大幅に上回る失敗を繰り返してきました。こうした失敗の責任はだれがとったのですか。また、今回こうした失敗を繰り返さない保証はありますか。

また、小泉内閣は、既にアメリカと共同で次世代のミサイル防衛システム研究を進めています。このミサイルの部品を米国に輸出するために、武器禁輸三原則の緩和までして開発を推進しています。我が国が共同開発したさらに高性能のこの次世代システムを、我が国が導入しないことは余り想定できません。この次世代システムも導入すると、一兆円に上積みされて、さらにどれぐらいの費用がかかることが想定されるのか、明確にお答えください。

財務大臣にもお聞きします。

ミサイル防衛のような極めて高額なシステムの導入を、限られた財政の中でどうとらえているのか。さらに、今述べたような、経費が当初の予定から大幅に膨らんださまざまな過去の経緯も踏まえ、財政再建に取り組むべき立場からお答えください。

第三に、本法案の中核であるミサイル防衛の意思決定方法について、七点質問します。

現行のミサイル防衛が開発途上の技術であり、多くの問題点があるにしても、実際の配備に当たり、約十分で飛来するミサイル迎撃の決定について、閣議決定などでは間に合わず、何らかの意思決定の法律が必要なことは理解できます。しかしながら、その手続を定めたこの法案には、幾つかの重大な問題があると考えます。

この法案では、ミサイル迎撃の意思決定には二つの方法があり、第一の方法は、飛来のおそれがある場合、つまり予測可能な場合は、あくまで総理の承認、閣議決定を得ることとなっています。

第二の方法は、総理承認、閣議決定のいとまがなくミサイルが飛来する緊急の場合のために、防衛庁長官が事前に命令を出すことができることとしています。シビリアンコントロールと実効性を両立させようとしたのでしょうが、この二つの関係が不明確で、逆にアブハチ取らずになりかねないものとなっています。

例えば、第一の方法は、シビリアンコントロールの観点からは望ましいのですが、飛来のおそれが予測できた場合、総理承認の段階を踏もうとすることで、その分対応がおくれたり、相手国を逆に刺激したりすることはあり得ませんか。お答えください。

また、第二の方法、すなわち緊急時のための防衛庁長官の事前命令、これは期限つきとされています。期限があることは、シビリアンコントロールの観点からは理解できますけれども、期限切れ直後にミサイルを発射されるなどの危険はありませんか。逆に、この期限が必要以上に長く設定された場合、常に総理承認が不要となるようなことになり、丁寧な第一の方法が有名無実化しないでしょうか。お答えください。

また、第二の方法の防衛庁長官の事前命令手続は緊急対処要領に従うこととされていますが、その内容は現時点では全く明らかにされていません。その基本を明らかにし、一部の内容を法律に書き込むと何か不都合が生じますか。お答えください。

今回の手続は、極めて重要なシビリアンコントロールの仕組みに例外を設けるものです。他の場合より丁寧な、国民の代表、我々国会による事後検証、責任追及の仕組みが必要と考えます。法案が定める国会報告は当然としても、国会での事後承認、事後承諾の仕組みを設けるべきと考えますが、いかがでしょうか。

さらに、この法案におけるミサイル防衛は、あくまで自衛権の発動ではなく、警察権的位置づけとのことですが、このようにした理由は何でしょうか。また、現在は技術的には不可能とされていますが、技術の進展等で、他国向けのミサイルを迎撃した場合、集団的自衛権に当たるなど、憲法上の問題が生じかねません。政府の御見解を伺います。

第四に、三自衛隊の統合運用、情報本部の移管など、法案の残余について、五点質問します。

三自衛隊の縦割りによる連携不足は、かねてより指摘されてきました。遅きに失したとはいえ、統合幕僚監部、統合幕僚長を設置する今回の改正は評価できます。これまで統合が実現できなかった経緯、具体的には意思決定がどう変わるのか、今後の実際の運営におけるさらなる課題は何か、お答えください。

また、安全保障において情報収集は何より大切だと考えます。情報本部を長官直轄にすることで、情報能力がどのように向上し、いかに情報の米国頼みを脱することができるのか、お答えください。また、この情報本部は、内閣官房、外務省などとどう連携するのか、官房長官、外務大臣からもお答えください。

いかなる法律をつくっても、その運用がきちんとできなければ意味がありません。領海侵犯をした潜水艦には、海上警備行動という法的枠組みがあったにもかかわらず、領海侵犯を確認してから三時間もたち、潜水艦が領海を出てから海上警備行動を発令するという、世にも間抜けな対応をしたのは、つい昨年十一月の小泉内閣です。潜水艦ですらこの対応のこの内閣に、空中を高速で飛ぶミサイルを十分単位の時間で本当に迎撃できる危機管理能力があるかは、甚だ疑問です。潜水艦事件の判断のおくれは、内閣官房に主たる原因があったと私は考えますが、防衛庁長官、官房長官から反省の弁と、いかなる改善策を講じたのか、伺います。(拍手)

備えあれば憂いなしは当然ですが、平和が続き、このミサイル防衛が使われない状態をつくることこそ外交の目標であることは、言うまでもありません。現在のミサイル防衛が完成する十年後まで、現在と同様にミサイル防衛の必要性が高いと感じるような東アジアの状況が続いていたとすれば、政治、外交の怠慢以外の何物でもありません。小泉内閣に、こうした現在の東アジアの状況を変えていく前向きなプログラムはおありですか。外務大臣、おありだとすればお示しください。

最後に、予想される大規模災害はもちろん、大規模テロなど脅威が多様化している現在、本当に国民の生命と安全を守るには、自衛隊、警察、消防といった縦割り構造を打破することこそすべてに優先されなければなりません。そのためには、民主党がマニフェストで提案する危機管理庁の設置などの施策が早急に必要です。これは、縦割りの官僚をリードできない自民党には絶対にできない政策です。(拍手)

こうした国民の生命と安全を守る政策の実現のためにも、一刻も早い政権交代が必要であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

○国務大臣(町村信孝君)

 本多議員にお答えを申し上げます。

まず、安全保障における情報収集に関する外務省と防衛庁の連携についてのお尋ねでございました。

外務省といたしましては、安全保障に関する情報収集について防衛庁との間で緊密に協力することが重要であると認識をしております。

こうした観点から、外務省は、防衛庁との間で日ごろより、在外公館で収集した情報を含めて、安全保障に関する情報や分析の交換を実施しております。

外務省といたしましては、今後とも、安全保障分野における情報の共有を図るなど、情報本部を初めとする防衛庁と緊密に連携してまいります。

次に、我が国の東アジア外交についてのお尋ねがございました。

引き続き不透明、不安定な要素が残されている東アジアにおいて安定と繁栄を確保するために、日本は、日・ASEAN、ASEANプラス3及び日中韓三国協力等、幅広い分野において域内の地域協力を推進しております。特に、安全保障面においては、日米安全保障体制を堅持しつつ、ASEAN地域フォーラム、ARF等の多国間の対話の場において信頼醸成を促進する等の外交努力を行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

○国務大臣(谷垣禎一君)

 本多議員にお答えいたします。 弾道ミサイル防衛システムの導入について、財政面からどう考えるかということでございます。 弾道ミサイル防衛システムの整備に当たりましては、現有装備の活用等によって効率的にシステムを構築するとともに、安全保障環境の変化等を踏まえまして、冷戦型の装備、要員の抜本的な見直し、効率化を図ることといたしております。

 これによりまして、弾道ミサイル防衛システムを導入する中で、防衛関係費は三年連続のマイナスとしておりまして、今後とも、限られた財政資金で効率的な防衛力整備に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣細田博之君登壇〕

○国務大臣(細田博之君)

 本多議員にお答えいたします。 まず、防衛庁情報本部と内閣官房との連携についてお尋ねがございました。 我が国では、防衛庁も含め各省庁が収集した情報のうち重要なものは、内閣情報調査室を通じて迅速に内閣のもとに集約され、総合的な評価、分析を行う仕組みが既に構築されているところであります。今回の法改正で防衛庁の情報能力が強化されることによりまして、政府全体としての情報機能も向上されるものと考えるところであります。 引き続き、防衛庁を初め各省庁と内閣との緊密な連携に努め、政府全体としての情報収集に万全を期してまいる所存であります。 次に、昨年十一月の潜没潜水艦の事案についてお尋ねがございました。 政府としては、先般の事案において、政府部内での認識統一等のため、結果的に海上警備行動発令までに相当の時間を要したという反省に立ち、今後は、関係者の間で早期に情報を共有するとともに、特段の事情が認められない限り、直ちに海上警備行動を発令することとし、これらの点について具体的なマニュアルを定め、政府部内で共有することといたしたところであります。(拍手)

    〔国務大臣大野功統君登壇〕

○国務大臣(大野功統君)

 本多議員から私に対して、二十問にわたる御質問がございました。

まず、法案の提出方法であります。 複数の法律改正を一つの法律案で行う場合には、従来から、法案に盛られた政策が統一的なものであり、趣旨、目的が同じであること、そして、法案の条項が相互に関連しており、一つの体系を形づくっていること、できる限り同じ委員会の所管に属する事項に関するものであることが望ましいことを基準といたしております。 本法律案に盛り込まれた政策は、いずれも平成十七年度予算に関連する統一的なものであることから、ただいま申し上げた基準に沿って法案を提出させていただいたものであります。

次に、イージス艦による我が国の防護についてであります。 イージス艦は、弾道ミサイル対処専用の迎撃ミサイルSM3を用いることにより、半径数百キロメートルを防護でき、イージス艦を二、三隻配備することにより、日本の全域を防護できると考えております。 現在、海上自衛隊はイージス艦を四隻保有いたしておりますが、イージス艦は、国際任務などの他の任務のほか、訓練、整備、検査等も必要であり、常時日本全土を防護することが困難なことは御指摘のとおりでありますが、日米間の協力を通じて、対応には万全を期してまいりたいと考えております。 なお、法案第一項の、弾道ミサイル等の飛来のおそれがあると判断された場合には、自衛隊の持てる能力を集中して、対応に努力していく所存であります。

次に、ペトリオットPAC3による防護地域についてであります。 ペトリオットPAC3は、政治や経済の中枢地域等のいわゆるねらわれやすい箇所を守る拠点防御のためのものであり、機動的に移動、展開し、状況に応じて最適な位置へ配備するという考えであるため、防護する都市を固定しているわけではありません。 また、我が国のBMDシステムは、イージス艦との多層防御により我が国全域を防御することとしており、弾道ミサイル攻撃に対する防御については、ペトリオットPAC3の配備数のみをもって考えるべきではないと考えております。

次に、SM3とPAC3の迎撃率についてのお尋ねであります。 装備の能力につきましては、我が方の手のうちを明かすということにもなり、また開発した米国との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきたいと思いますので、御理解をくださいますようお願いいたします。 しかしながら、それぞれの装備の信頼性について、米国での試験結果について申し上げます。SM3は、七回中六回迎撃に成功いたしております。PAC3は、十二回中十回迎撃に成功しているという実績がございます。

次に、弾道ミサイルのおとりや同時発射への対応についてであります。 装備の具体的な能力については、お答えを差し控えさせていただくことを御理解くださいますようお願い申し上げます。 なお、弾道ミサイルのおとり、いわゆるデコイについては、さまざまなものが考えられますが、一概に対応できる、できないとは言いがたいものがありますが、イージスBMDシステム、ペトリオットPAC3システムの双方とも、同時に複数の目標に対処する能力があります。

次に、ミサイル防衛は軍拡競争を誘発するのではないかというお尋ねでございます。 我が国が導入するBMDシステムは、弾道ミサイル攻撃に対し、我が国国民の生命財産を守るために純粋に防御的、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であります。また、このシステムは、相手国が我が国に対し弾道ミサイルを発射しない限り、実際に活用されることはありません。 このようなBMDシステムの特徴は、我が国の専守防衛の理念に合致するものであり、軍拡競争を招くとは考えられません。

次に、BMDシステムにより対米依存が深まるとの御懸念についてであります。 我が国のBMDシステムにつきましては、平成十五年十二月の官房長官談話のとおり、我が国みずからが主体的に判断して運用することを基本といたしております。 また、日米安全保障体制のもと、効率的、効果的対処のため、米国との技術面での協力や情報協力などが重要であると考えておりますが、このことにより対米依存が深まるものとは考えておりません。

次に、過去の戦闘機などの開発における見積もりについてであります。 御指摘の戦闘機はF2を指すものと思いますけれども、当初、F2の開発を検討した時点では、開発総経費を千六百五十億円程度と見込んでいましたところ、米国との共同開発の枠組みが整備されたこと等に伴い、最終的には約三千二百七十億円の総経費を要したものであります。ただし、開発期間中においては、結節ごとに要求性能や開発経費の妥当性を判断してまいったところであり、F2の開発に問題があったとは言えないと考えております。 また、他の装備品についても、これまでの開発において、御指摘のような事例はないものと考えております。

次に、BMD経費の見積もりについてであります。 現時点においては、日米共同技術研究関連経費を含め、当面八千億円から一兆円程度を要するものであろうかと見込んでおります。 他方、BMDシステムの整備やさらなる能力向上につきましては、その時々の国際情勢や米国におけるBMDの開発状況等を考慮し、不断に検証、検討していくことが必要であることから、現時点で正確に経費を見積もることは困難であり、最終的には各年度の予算を通じて確定されるべきものであると考えております。

次に、法案の第一項の総理の承認と相手国への影響についてであります。 第一項の内閣総理大臣の承認には閣議決定が必要と考えておりますが、閣議決定は実際に閣僚が集まらなくても電話連絡などで可能であり、迅速な対応ができるものと考えております。 また、BMDシステムは、純粋に防御的、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であり、相手国が我が国に対し弾道ミサイルを発射しない限り、実際に活用されることはありません。したがって、第一項の総理承認により、相手国との関係で問題が生ずることはありません。

次に、法案の第三項の命令の期間についてであります。 緊急対処要領には、どのような場合が第三項の緊急の場合に該当するか、また、どのような場合に防衛庁長官は命令を発出することができるか等を明記することを考えております。 また、防衛庁長官は、現実の自衛隊の活動状況等を踏まえつつ、緊急対処要領に従い、合理的な期間を定めて命令を発出することを考えております。 このように、第三項の命令は、内閣及び防衛庁長官のシビリアンコントロールを十分に確保した上で発出することとなるため、必要以上に長い期間が設定されることはないと考えております。 なお、この命令は、自衛隊の行動に直接かかわるものであり、従来の命令と同様に非公表とすることを考えており、命令の期間終了をねらって弾道ミサイルが発射されるような事態は生じないものと考えております。

次に、緊急対処要領の内容を法律に記載すべきとの御意見でございます。 緊急対処要領の目的や作成の手順につきましては、法案に明確に規定されております。 また、その内容につきましては、対処措置の対象やその破壊方法、措置を命ぜられた自衛隊の部隊の行動範囲などを記載する考えである旨、国会の御審議等を通じ既に御説明申し上げておりますが、今後とも、可能な限りわかりやすい説明に努めてまいります。

次に、国会の事後承認等の仕組みを設けるべきとの御意見についてであります。 今般の弾道ミサイル等の破壊措置は、国民の生命財産に対する被害を防止するための必要かつ当然の措置であります。 当該措置の特性としましては、落下することによりいずれにせよ損壊するものを破壊するにすぎないこと、相手国の領域や人員を害することはあり得ないこと、防衛出動など国会の関与を必要とする他の行動類型に比べ、国民の権利の制限は極めて限定的であることなどを考慮すれば、事後であっても国会承認等の仕組みを設ける必要はないのではないかと考えております。

次に、ミサイル等の破壊措置の方法、法的性格についてであります。 今般の弾道ミサイル等の破壊措置は、防衛出動が下令されていない状況のもと、我が国に弾道ミサイル等が飛来した場合に、迅速かつ適切な対処を行うこと、シビリアンコントロールを確保することを考慮し、必要な規定を定めたものであります。 弾道ミサイル等が現に飛来する場合、破壊する以外に被害を防ぐ方法はなく、今般の措置は、国民の生命財産に対する被害を防止するため、我が国として必要かつ当然のものであります。 当該措置は、自衛権の行使ではなく、自衛隊法上の任務として公共の秩序の維持に該当し、あえて整理すれば、警察権の行使に相当するものと言ってもよいと考えられます。

次に、技術の進展と集団的自衛権の問題についてであります。 今般の弾道ミサイル等の破壊措置は、我が国に飛来する弾道ミサイル等につき、その落下による我が国領域における人命または財産に対する被害を防止するため実施されることは法案に明記されており、技術の進展等により憲法上の問題が生じかねないとの御懸念は当たらないと考えております。

次に、今般の統合運用の強化について、三点のお尋ねがありました。 まず、これまでの統合に関する経緯についてでありますが、欧米諸国と比較すると、我が国はこれまでも統合運用強化のための措置を講じてきましたが、統合運用の経験が浅く、その進展が遅かったのは確かであります。 しかしながら、陸海空自衛隊の部隊が一体となって活動するニーズが増大し、また、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応し得る防衛力を効率的に構築することが必要となってきております。 こうした時代の要請を踏まえ、今般、統合幕僚監部の新設等により、統合運用をさらに強化することにいたしております。

二点目は、意思決定の変化についてであります。 現状においては、陸海空自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの長官の補佐は、基本的に各幕僚長により個別に行うこととなっており、必要に応じ統合幕僚会議で統合調整を行い、長官の意思決定を助けることとなっております。 今後は、自衛隊の運用に関しては、新設する統合幕僚長が軍事専門的見地から一元的に長官を補佐することとしており、陸海空自衛隊が有機的に連携し、一体的な運用を行うことを基本とした長官の意思決定が、より迅速に行われることになるものと考えております。

三点目は、今後の課題についてであります。 新たな体制における統合運用の実効性の確保のためには、教育訓練、情報通信等の各分野において統合運用の基盤を確立することが必要であると考えており、昨年末に閣議決定された新中期防においても、これらに関する事業を行うこととしているほか、統合運用を実効的に行い得る組織等のあり方について、検討の上、必要な措置を講ずることとされております。 さらなる措置の必要性については、今般の体制整備を含め、統合運用の実績等を踏まえ検討してまいる所存であります。

次に、本法律案における情報本部の改編と情報能力の向上等についてお尋ねがありました。 本法律案においては、現在は統合幕僚会議のもとに置かれている情報本部について、長官直轄の特別の機関とし、また、広範かつ総合的に情報の収集、分析が行われるよう所掌事務を定めることといたしております。 これにより、防衛庁全体の視点から、より広範な情報を収集、庁内各機関のニーズに応じた総合的な分析を行う、防衛庁長官等に、より迅速的確に報告をする、防衛庁の中央情報機関としての情報本部の地位、役割を明確化できるものと考えております。 なお、防衛庁としては、情報能力の強化のため、このような体制整備に加え、情報収集器材の整備や要員の確保、育成等につき今後とも努めるとともに、アメリカとの情報面での協力関係も強化してまいります。

次に、情報本部と関係省庁との連携についてでございます。 既にお答えもございましたが、昨年十二月に策定された平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱にもあるように、各省庁がその特性、得意分野を生かしながら、政府全体として連携して情報の収集、分析に当たるべきことは当然であると考えております。 防衛庁といたしましても、我が国の防衛等の観点から情報本部が収集、分析した重要な情報について、内閣官房を初め関係各省庁に迅速、適切に伝達し、その共有を図るなど、今後とも情報面での連携に最大限努力してまいります。 最後に、昨年十一月の潜没潜水艦の事案についてお尋ねがありました。

 政府としては、位置の特定が難しい潜水航行中の潜水艦に対し、慎重に必要な手続を踏んで対処したものですが、このような事案に対しては、迅速に毅然とした行動をとるべきであり、かつ、透明性をもって対応していくべきであると考えております。 こうした点を反省しつつ、今後は、我が国領海に接近する潜水艦の情報が得られた場合には、これを早期に政府部内で共有すること、我が国領水内で潜没航行する潜水艦への対処は、特段の事情が認められない限り、閣議決定、平成八年の閣議決定でありますが、「我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦への対処について」の要件に該当する旨の認識を統一し、直ちに海上警備行動を発令すること、これらの点について具体的なマニュアル、対処要領を定め、政府部内で共有することといたしたところでございます。 以上でございます。ありがとうございます。