衆議院-予算委員会 2020年(令和2年)11月04日
 (国会会議録検索システムより抜粋) ※この質疑の動画はこちら



○本多委員 立憲民主党の本多平直です。
 野党の大きな役割の一つは政府をしっかりとチェックをすることだと思っていますので、そういうつもりで質問をさせていただきます。
 菅総理には初めての質問になります。菅総理、御就任おめでとうございます。
 最初に、まず、なぜ私たちが今、日本学術会議の任命拒否問題をこれだけ重要に考えているかということについて、総理の基本的なお考えを聞きたいと思います。
 日本は、太平洋戦争前、一時期、学問の自由が奪われてしまって、大学の先生のみならず、一般の人々も物が言いにくい社会になった、そういう歴史を経験していると思うんですが、そういう認識でよろしいですか。

○菅内閣総理大臣 そこはそのとおりです。

○本多委員 総理、それはどういう手段で行われたか。こういう学説を言うなという法律ができたのか、それとも別な手段で大学の先生が物が言いにくくなったのか、若しくはその両方か。どうだったかという御認識はありますか。

○菅内閣総理大臣 旧憲法下において、国家権力により学問の自由が圧迫されることなどを踏まえ、特に明文で学問の自由を保障したものだというふうに思いますし、また、京都帝国大学の滝川教授が、その学説を批判され、文部省により休職処分されたことなどが滝川事件と呼ばれたということは承知しています。

○本多委員 ありがとうございます。
 実は、今総理がおっしゃった一九三三年の滝川事件という、京都帝国大学の刑法の先生が休職処分に、その学説が何とか主義的だとかなんとか言われてやられ、その後、人事でやられ、さらに出版法という法律でその先生の本が発売禁止にされたわけです。つまり、法律でどんどん大学の先生の学問の自由が奪われたという部分と、人事で始まっているんですね。
 総理、今回は大学じゃないからいいだろうと総理は時々言っていらっしゃるんですけれども、私たちはやはり、今回の学術会議、もちろん直接大学じゃないんだけれども、学者の先生たちが集まっている組織の人事、こういう戦前の経緯を踏まえて、あれだけ独立性を持って、菅総理が幾らこいつ嫌だなと思っても特定の人を、この人のけてとか言えないように仕組みをつくってきた。この歴史との関係は理解されていますよね。

○菅内閣総理大臣 そこは承知しています。

○本多委員 それから、総理、日本は幸いなことに今、学問の自由があります。憲法でも保障されています。世界のほかの国々で学問の自由がいろいろな形で制限されている国があるかどうか、これは総理、どう認識されていますか。

○菅内閣総理大臣 それはあると思っています。

○本多委員 そうなんですよ。
 私は、戦前に戻すなという面もありますし、日本に近い国でも、学問の自由が多分ないんだろうなと思う国があります。そういう国にしたくない、そういう思いで、そういう話の第一歩にこの人事の問題がなってはいけない、そういう思いで、一生懸命、我々質問していますので、ぜひそういうつもりでお答えをいただきたいと思います。
 さっき言ったとおり、実は、こういう学問の自由の弾圧なんかというのは、法律でやるやり方と、人事で抑えていくというやり方があるんですけれども、ずっと疑問だったんですけれども、総理、総理はずうっと官房長官のころからこの学術会議に問題意識を持たれていたわけですよね。
 ここで、法律を改正しまっせ、日本学術会議法の、法案の、それを検討するとかそういうこと、多分それをやられても私は反対すると思うんですが、総理、そういう方法で、法律を改正してこの日本学術会議の問題に取り組んでいくという方法をとらなかったのはなぜなんですか。何で紙が出るんですか。

○菅内閣総理大臣 日本学術会議法上の推薦に基づく会員の任命については、憲法第十五条第一項に基づけば、推薦された方々を必ずそのまま任命しなきゃならないということではないという、この点について、内閣法制局の了解を得たことだ、このように私は思っています。

○本多委員 菅総理、今、何を聞かれても、出てきた紙を読むのをやめていただきたいんですね。
 いいですか。つまり、法律を変えなくても済むからということなんですか。法律を変えなくても学術会議の任命のあり方を変えられるから、法律を出さなかったと。
 結構、安倍政権って、例えば農協法とか、何で農協の人事のこんなことを改正するのかな、農協の自由で、いろいろな判断で、全国にある農協が自由に人事をやればいいのに、その改正法とか出してきて、いろいろな議論をさせられたんですよ、我々も。そういう方法をとらなかったのはなぜですかと聞いているので、その紙と関係なく、お願いします。

○菅内閣総理大臣 ですから、今申し上げましたように、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫の考え方であり、今回の任命も法律に基づいて行っている、そういうふうに思っています。

○本多委員 今回の任命について聞いていないんです。学術会議の問題点をいろいろ言われているので、そういうものを改めるのに、任命の仕方でやるんじゃなくて、根本的に、農協法とか漁業法とかやったじゃないですか、法律を改正したらいかがなんですかということを聞いているんですよ。
 なぜ、法律を改正しないで、その人事を、六人だけしないとかそういう方法でやるのが、それが適法か、そこの秘書官さん、要らないです、紙。紙が要ることは聞いていないですから。いいですか。秘書官、いいですか。
 なぜ、法律の改正で、いろいろな学術会議の問題点を感じていらっしゃるんだったら、我々国会に諮って、残念なことに自民党さんは多数を持っているんだから、多分総理が提出した法案は通るんですよ。その方法をとられなかったのはなぜなんですか。

○菅内閣総理大臣 ですから、法律に基づいてできることだから法律に基づいて行ったということです。

○本多委員 私、なぜこれを聞いているかというと、人事が大事だと。学問の自由を奪っていくときに、法律でやるやり方もけしからぬと思いますよ。でも、人事でやるやり方ももっと見えにくくてけしからぬと思っているんですよ。
 余りこういう例えを言うのがどうかわかりませんが、例えば、今香港で非常に弾圧が起こっていますよね。これでさえ、これ自体けしからぬですし、法律をつくったからいいというわけじゃないんですけれども、香港国家安全法とかという法律をつくって、あの中国が香港でやっている弾圧でさえ法律をつくってやっているんですよ。つくったからいいというわけじゃないから誤解しないでくださいね。だけれども、ああいうことでさえ、あの中国政府でもああいう法律をつくってやっているんです。
 それを、こういう弾圧につながっていく第一歩になりかねないような人事を、法律ではない形でやっていく方が私はけしからぬと思うんですけれども、いかがですか。

○菅内閣総理大臣 先ほど来申し上げていますけれども、例えば、今回、推薦された方々を必ずそのまま任命しなきゃならないということではない、この点について、私どもも法制局に相談をした上の中で判断をしていまして、今回の任命も法律に基づいて行っていることでありますから、本多委員の言っていることと変わらないんじゃないでしょうか。

○本多委員 法律に基づいているかどうかを私たちは今議論しているので、そこをこれから詰めていきたいと思います。
 一昨日の議論で、いろいろおかしいことをおっしゃっているんですけれども、私、気になった点が幾つかあります。
 安保法制に反対したとか政府に反対したとかそんなことは理由じゃないという議論の中で、総理、総理は二回同じ反論をされているんですよ。政府に反対する人というのは、任命された方の中にもたくさんいらっしゃるとおっしゃっているんですよ。
 つまり、この六名は、反対している、同僚の今井さんなんかが一生懸命調べて、六名はいろいろ政府に意見を言っていたということを調べたんですけれども、残りの九十九の中にも政府にいろいろ反対したり安保法制に反対したり意見を言っていた人がいると総理はおっしゃったんです、二回。
 どういうふうにこれをお知りになったんですか。

○菅内閣総理大臣 賛同者として署名していらっしゃる方です。それは新聞でもあったんじゃないでしょうか。

○本多委員 何の賛同者に署名しているんですか。

○菅内閣総理大臣 例えば安保法制とか、そういう政府の法案に反対をしているというのは、そういう学者の会で署名された方、そういうことで私は承知しているということです。

○本多委員 そういうリストがあるんですか。そういうリストがあるんですか、政府の中に。

○菅内閣総理大臣 例えばいろいろな新聞にオープンで、賛同者として名を連ねている方じゃないでしょうか。
○本多委員 総理、今回外された六人の方も、お一人しか知らなかったわけですよね。九十九人のうち、何人そんなことを知っているんですか、政府に反対したことがあるとかないとか。そのリストもちゃんと見ていないみたいじゃないですか、この任命に関して。

 秘書官、あなたの言うとおりに総理は話しているんですよ、今テレビを見ている方は気づかないかもしれませんが。そこで耳打ちするのはやめてくださいよ。総理しかわからないはずなんですから。いいですか、総理。
 どうしてそんなことを知っていらっしゃるんですか。

○菅内閣総理大臣 たしか新聞とかいろいろなものにあったと思いますよ。私もこの学術問題の記事についてはずっと見ていますので。

○本多委員 そういう情報をお持ちになっているということはよくわかりました。
 さて、私、反対する人は任命された方の中にもいると自信満々におっしゃっているんですけれども、ここが実は問題だと思っているんですよ。
 つまり、もちろん、安保法制とかに反対した人を全部きれいに外したら、それはそれで見え見えですよね。そういう形じゃなく、安保法制に反対した六人は今回任命せず、ちらちらと残して、何だかわからないようにしている、そういうことじゃないんですか、これは。

○菅内閣総理大臣 私がそういう人がいるということは、質問されたからお答えをさせていただいたんです。全く今の、委員の質問ということは、そうしたことは考えていません。

○本多委員 いや、過去の総理の人事を見ても、要するに、何がおかしいじゃないんですよ。
 いいですか、一昨日議論になった、また、私も買っちゃったんですけれども、これ。何か、自信満々のNHK改革の議論ですよ。中身のいい悪いはさておいて、人事を使ってやったわけですけれども。
 そもそも、説明しない説明しないといってこのときは、当時も説明されているんです、新聞で。きちんと読みましょうか。「放送改革担当課長を更迭」、普通の人事異動じゃないときに課長を人事異動させるんですから、異例なので、ちゃんと説明しているんですよ。「NHK改革を加速させるため、新しい視点でやる必要がある。適材適所だ」と。こうして人事異動について説明されていることもあるということはしっかり指摘しておきますよ。
 だから、何でもかんでも、人事異動のことだから答えないというのは、これはこういう例がありますから、今後やめていただきたいんですけれども。
 そもそも、総理の人事のやり方。いいですか、この人、何で更迭されたのかというと、本を読んで私はびっくりしたんですよ。この方、別に、いろいろな官僚がいますよね、総理が総務大臣だったころ、総務大臣がやろうとしていることを裏で野党とか与党に根回しして邪魔しようとする官僚とか、いますよね。そういうことをしていたんだったらとか、それから、大臣のいない場所で、菅のやろうも何だかんだと総務大臣の悪口を言ったとかというんだったら、それはそれですよ。
 しかし、このとき、この方が言ったことというのは、総理が書いている本によると、いいですか、新聞記者さんたちとの懇談の場で、「大臣はそういうことをおっしゃっていますが、」と敬語で、「自民党内にはいろんな考え方の人もいますし、」抵抗派がいたんでしょう、そのときの菅総務大臣に対して、「そう簡単ではない。」事実を言っているだけですよね。「どうなるかわかりません」と。状況を大臣のいない場で話しただけで、それを大臣に知らせた記者がいて、これをもとに更迭されたんですよね。人事異動されたということなんですよ。
 こんな人事、適切ですか。

○菅内閣総理大臣 私は今もって適切だと思っています。
 というのは、私ども政治家、国民の負託を受けて政治家に当選をさせていただいて、大臣になれば、そこは当時、総務行政全体に責任を持つ立場になるわけでありますから、その中で、政治主導で物事を進めていきたい、そう私どもは有権者の皆さんに訴えをして、当選をさせていただいて、大臣になって、私、ふるさと納税をつくったんですけれども、ふるさと納税のときは、役所は全部反対でしたよ。
 ですから、例えば、NHK改革というのは私は必要だと思っていました。当然やらなきゃだめなことだと思いました。当然、大臣、これは何回も話しているわけですから、課長というのは、大臣のところに説明をしてきて、大臣の意も酌んでやってもらっていると思っていました。ですから、そういう中で考え方が違うそうした人を一番自分がやりたいところの責任者に置いておくというのは、これはやはりどうかと思ったんです。でも、私、非常に仕事のできる男でありましたので、最終的に、局長までして、次官待遇までなったと思いますよ。
 ですから、やはり大臣としての責任として物事を進めるときに、そうした対応をさせていただいたということです。

○本多委員 そういうふうにおっしゃっているんですけれども、改革のためというよりも、大臣、ちゃんと言っているんですよ。この人事によって、「結果として官僚の中に緊張感が生まれました。組織の意思が統一され、一丸となってNHK改革に取り組むことができたのです。」つまり、結果としてというか、一人をこういうふうに異動させたら、この人だけが悪いわけじゃない、いろいろな人がいたと思うんですよ、総務省の中に、一人をやるとぴりっと総務省が締まったと。
 こういう人事のやり方というのはあるかもしれませんが、つまり、今回の日本学術会議にしても、安保法制に反対した人も反対しない人もまぜながら、反対した人六人を任命をしない、こういうやり方を続けていくということは、本当に思想とか学問の自由を害すことにつながってきかねない、私は、そういう動きだと思っていて、ぜひ任命を、撤回をしていただきたいと思っています。
 それで、少し事実を確認したいんですが、新聞が報道しています、実は今回が初めてじゃないと。これまでいろいろ、多目のリストを出してこいとか、法律に違反しないようにリストどおりやらなきゃいけないから推薦名簿は多目に出せとかいうことをやってきたり、それから、欠員が出て持っていった人を、官邸が難色で、仕事をしてもらわないといけないのに欠員のままほったらかしにしたり、こういうことをずっと安倍政権のころからしている。この事実はこのとおりでよろしいですか。
 通告しています。当時官房長官の菅総理にお聞きしています。

○加藤国務大臣 今委員お示しをされました人事のプロセスについて、これを一つ一つ具体的に説明するのは避けさせていただいているところでありますけれども、学術会議から正式な推薦名簿が提出される前においても、さまざまな意見交換が内閣府の事務局などと学術会議の会長との間で行われていたというふうに承知をしております。
 そうしたやりとりを踏まえながら、場合によっては、補欠人事というんでしょうか、それがなされていなかったという場合もあるということであります。

○本多委員 曖昧なことじゃなくて、二〇一六年の補欠人事、二〇一八年の補欠人事は、官邸が難色を示して欠員のまま任期の終わりを迎えたということでよろしいですか。事実の確認です。

○加藤国務大臣 個々のやりとりについては、先ほど申し上げております、説明を控えさせていただいておりますが、最終的に学術会議側からはそうした補欠人事が、推薦が行われなかったということであります。

○本多委員 これは事前なんですか。推薦が行われたものを難色ですじゃなくて、事前なんですか、これ。

○加藤国務大臣 済みません、これは委員がつくられた資料なので、私がこれとは申し上げられませんが、当時、それぞれの時点において日本学術会議側から補欠人事の推薦があったということではない、この法律に基づいて推薦があったわけではないということであります。

○本多委員 わかりました。推薦を見送らせたということですね。

 こういうふうに、官邸が難色を示して、日本学術会議に推薦を見送りをさせるという事前の手続は、適法ですか。

○加藤国務大臣 別に、見送りをさせたのではなくて、結果的に日本学術会議から推薦が行われていなかったということであります。

○本多委員 じゃ、井上さんですか、日本学術会議を担当されているのは。
 こういう事前の調整をして、何か官邸が難色を示したら、あなたは独立性を守る立場なんですよ、こっちと違って。こんなことを二回も過去見送りしているというのはどういうことなんですか、これ。こんなことをしていいんですか。事前に調整して、見せて難色を示されたら欠員のままやっているというのは、こんなことをしていていいんですか。

○井上国務大臣 委員御指摘の過去のこの経緯につきましては定かに承知をしておりませんけれども、しかし、行政機関の一環として学術会議があって、そして政府とさまざまな意見交換を常に行いながらやっている、その一環だと思っております。

○本多委員 大臣、このことが問題になってから、そんなこと、定かに承知していないというのはどういうことなんですか。通告もしていますよ、この問題は。
 こういうやりとりをして、事前に難色を示されたらリストを出さないなんて、こんなことをして本当にいいんですか、それで。

○井上国務大臣 先ほど官房長官からもお答えしたとおり、委員が御指摘のそのケースにつきましては、正式な推薦があった後、手続に入った後の話ではありません。後の話であれば当然そういったやりとりを承知もしておりますけれども、そうじゃない、その段階での話ということですから、承知していないと申し上げました。
○本多委員 百歩譲って、大臣が絡んでいるんだったらいいんですけれども、全部官房副長官がやっているという話があるんですよ、杉田官房副長官。安倍内閣からずっと官房副長官をやって、内閣人事局長までやって、また今回も留任をしている方が、学術会議の会長が説明をしたいと言っても門前払いしているんですけれども、門前払いした側、事実関係、総理。過去に、説明させてくれと言って会おうとした、杉田官房副長官が学術会議側と会うことを拒否した、この事実はありますか。

○加藤国務大臣 二年前の補充人事のときのお話だと思います。

 杉田副長官と山極、当時、前会長との間で直接的なやりとりは行われてはおりませんけれども、ただ……(本多委員「そんなことは聞いていないですよ。門前払いをしたかどうかですよ」と呼ぶ)いやいや、ですから、事務局を通じていろいろなやりとりはあったと聞いておりまして、その間の具体的な、会う会わない、どんなやりとりがあったか、これは一つ一つ詳細にお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、そうした状況、お二人が会うということではないにしても、しかし、その両者の間について、それぞれ事務局が間に入りながら必要なやりとりは行われていたというふうに考えております。

○本多委員 門前払いされていたんですから、その事実は別にわざわざ確認しなくていいですよ。門前払いされているんですよ。
 こういうことを、こういう経過をしていたのは、杉田官房副長官の上司であった当時の菅官房長官は御存じですか。この問題に関していろいろな調整をして、本来だったら学術会議の言うとおり名簿を出させなきゃいけないものを、事前に、まあ、官房長官が絡んでいたのだったらちょっとはましですけれども、杉田官房副長官という役人のトップが、学術会議の人と勝手に内々で調整して、会長とも会わず事務局と、事務局というのは役人ですからね、役人同士で調整して名簿を出させないようにした。こんなことがあっていいんですか。それを御存じですか。

○菅内閣総理大臣 承知していません。

○本多委員 では、とんでもない話だと思いますよ。
 官房長官に相談をしないで杉田官房副長官が、本当は総理大臣なんですよ、本当は当時の安倍総理に、事前調整はするかもしれない、しかし、こういうこと、こんな、官邸が難色を示して推薦さえさせないなんということをやっているんだったら、本当は安倍総理に相談しないといけないけれども、官房長官にも杉田官房副長官という人はしていないということでよろしいですよね。そういうことになりますよね、こういうことが事実であれば。
 それを官房長官はどう思いますか。部下である副長官が、杉田副長官が、官房長官にも相談しないで、総理大臣でさえいじれないといって今話題になっている日本学術会議の人事にこういう内部調整をして、そのことを官房長官にも報告していなかった。これは本当に正しいことですか。

○菅内閣総理大臣 事実関係を私は承知していませんけれども、各省の人事への調整ですよね、総合調整をやるわけでありますから、そのことについては承知していませんけれども、そこについては、先ほど官房長官が説明しましたように、当然、事務方等が入っているんじゃないでしょうか。

○本多委員 何かもごもごなんですよ。ずっと問題意識を持ってきたと言っていて、こんな問題が官邸で起こっていて、直属の部下がこんなことをやっていて、官房長官が知らなかったはずはないと思うので、後でまた事実とかが出てきたら困るので、国会での答弁は正確にしてください。記憶がないなら記憶がないと言ってくださいよ。
 それで、では、この過程を知るには、官房副長官を、知りたいのでお呼びをしているんですけれども、来ていただいていないんですよ、委員長。安倍総理にも相談をせず、今の菅総理のお答えどおりだと菅官房長官にも相談をせず、杉田官房副長官、もう八年もやっているんですよ、副長官を、この方が勝手にこんな人事をやっていたということについてお聞きしたいので、何度言っても自民党が拒否するんですけれども、ぜひ呼んでいただけないですか。

○金田委員長 ただいまの件は、理事会で協議を続けております。

○本多委員 事ほどさように、ずっとお話ししてきたとおり、この日本学術会議の問題というのは私は大変重要だと思っているんですね。
 それで、先ほど枝野代表、一昨日、川内さんに答弁になって、論理的には正しいと二度も菅総理はおっしゃってくださいました、川内さんの質問に。このままほっておくわけにはいかないということですよね。枝野代表とのやりとりでは、ちゃんと任命してくれたら総合的に考えるということなんですけれども。
 何とか、今回せっかく新しい内閣ができて、私たちも、デジタル化というのはどうなっているんだとか、コロナの問題はもちろんですけれども、いろいろ議論したいことがあるので、できるだけ早くこの問題の解決に向けて、これは総理しかできないわけですよね、総理に御尽力を何とかいただきたいんですけれども、いかがですか。

○菅内閣総理大臣 私、梶田会長とお会いをいたしました。梶田会長に、学術会議が国民から理解をされる組織、そしてよりよい組織になるように、それは努力していきましょうということでは一致いたしました。

○本多委員 よりよい組織にする話と同時に、その前提として、手続論は総理にお任せしますけれども、今回、まだ任命されていない、拒否したという言い方をされていないんですよ、総理は、幸いなことに。ですから、なぜか、リストは出して推薦はしたけれども、まだ任命されていない六人をしっかりと任命をしていただきたいということを強くお願いをしておきます。
 最後に、準備をしてきた質問を一つしたいんですけれども、総理、この世に、掛金を払っていないのに死ぬまで年二百五十万円とか年三百五十万円とかもらえる年金があるのを御存じですか。

○菅内閣総理大臣 承知していません。

○本多委員 承知していないんですか。ちょっとびっくりいたしました。
 実は、今回、この問題が出てから、日本学術会議の皆さんにデマが飛んで、年金をもらっているんじゃないかというとんでもないデマが出たので、私もいろいろ調べてみたんですよ。そうしたら、別な組織に、何とそこに任命されたら年二百五十万、年二百五十万、日本学士院、日本芸術院、そして文化功労者と三つあるんですけれども、芸術院は二百五十万、そして学士院は二百五十万、文化功労者は年三百五十万、死ぬまでもらえるんですよ。全然、学術会議と関係ないですよ。でも、今回気づいて、調べて、お知りになっておいた方がいいと思うんですよ。
 なぜかというと、総理、学術会議にけちをつけるときに、十億使っている、十億使っていると言うんですけれども、例えば、ちょっと文化功労者、主な方を、私の知っている人なので偏っているんですけれども、こういうそうそうたるメンバーなんですよ。伝統芸能の方はちょっと詳しくないので、画家の方とかが入っていなくて済みませんという感じなんですけれども。私が知っている方、王貞治さん、吉永小百合さん、ことしでいえば西川きよしさん、こういうすばらしい方々なので、こういう方にこういうことを、文化の功労に当たってこういうことを、お金をもらうということにけちをつけているわけじゃありませんけれども、しかし、これにかかっている予算、幾らかかっていますか。
○萩生田国務大臣 現在の文化功労者は二百三十三名でありまして、文化功労者年金施行法令において、年金の額は年間三百五十万円と規定されております。
 年間総額は、今年度の文化功労者を含めて八億一千五百五十万円となります。

○本多委員 学術会議の、十億、十億といいますけれども、こういうことも、総理、知っておいて考えた方がいいんですよ。
 それで、私、この方々に全くけちをつけるつもりはありません、文化に功労があった方。ところが、最近おかしな現象が起こっていて、名前は言いませんよ、ここ二、三年、会社の社長が入ってきているんですよ。大手食品会社とか大手化粧品会社とか、ことしは大手グルメサイト会社の会長なんかも入っているんですね。
 もちろん、誰だって、僕だって文化にちょっとは功労しているかもしれませんよね。それから、大きな会社というのは大抵、最近、文化にお金を出したりしていて功労されているんですが。年三百五十万円出す組織に経済人の方を、特に、最近入った方は総理とお知り合いなんですよ、たまたま。こういうことをすると、非常にいろいろな疑念が生じるんですよ。
 何でこういうことを言うかというと、実はこれをどうやって選ぶか知っていますか、総理。この選ぶところにも杉田さんがちょろちょろしているんですよ。つまり、杉田さんがこれを選ぶ人を選ぶんですよ。杉田さんがこれに直接介入したという証拠はないんですよ。ただ、これを選ぶ分科会というのがあるんですよ。そこのことに杉田さんがちょろちょろしているんですよ。
 これ、いいですか……(発言する者あり)いや、証言があるんです。前川元文部科学次官が、この問題なんかは全然気づかなかったんですよ、僕、学術会議のヒアリングをしているときに、いや、これのことは、学術会議の話はわからないけれども、文化功労者を決める会議の人選を持っていったそうです、文部科学省から。そうしたら、杉田さんに、こいつとこいつは安保法制反対だからだめと言われたというんですよ。
 これは事実を確認しておくように言っていますけれども、この文化功労者を選ぶ会議があるんですよ、十人ぐらいの。これも、林真理子さんとか、そういう文化人の方が入ってこれを選ぶんですよ。その会議を選ぶところの人事を、杉田官房副長官が絡んでいるんですけれども、これは公正ですか、こんなことをしていて。

○萩生田国務大臣 文化審議会委員は、文化審議会令第二条の規定に基づき、文部科学大臣が任命するものとされており、年度ごとに、法令に基づき、学識経験者のある者のうちから適切に判断しております。
 今御指摘の件は、最終的に閣議了解をいただく案件については、これは文部科学省に限らず、事前に官房長官や副長官に相談をすることはございます。それはなぜかといいますと、文部科学省から見たその人の評価だけじゃなくて、もしかするとそういう人は、多岐にわたって活躍していると、結果として利益相反を起こす可能性がありますから、他省庁に照会をかけることもありますので、御理解いただきたいと思います。

○本多委員 こういう人事もちゃんと聞きたいので、杉田官房副長官をしっかりこの国会にお呼びをしたいということを重ねて申し上げて、私の質問を終わります。

○金田委員長 この際、石川香織君から関連質疑の申出があります。江田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石川香織君。

○石川(香)委員 立憲民主党の石川香織でございます。
 きょうは、委員の皆様に御配慮いただきまして、会派を代表して質問させていただきたいと思います。
 私は、国家の基本は食、一次産業だと思っておりますので、きょうは主に一次産業のことについて質問させていただきたいと思います。
 一次産業の現場も非常にコロナの影響を受けております。私の選挙区でありますけれども、北海道の十勝というところでありまして、小麦の生産量が全国の二五%、小豆が六〇%、それからジャガイモ、大豆も主産地であります。生乳の生産量も全国の一五%を占めるところで、酪農、畜産、水産業、林業があるところでありまして、食料自給率は一二〇〇%を誇るところであります。
 きょうは、ぜひこの一次産業の課題についてお伺いをしたいと思いますが、そういう地域でありますので、菅総理の農業、農村に対する姿勢というものに大変注目をしております。
 まず、菅総理にお伺いをしますけれども、菅総理の農政の一丁目一番地の政策とはどんなものでしょうか。

○菅内閣総理大臣 私は、地方を活性化させるためには、やはり農業が強くならなきゃならないというふうに思っています。
 私、官房長官でありましたけれども、農業改革、農協法の改正を六十年ぶり、漁業法改正、森林法改正、それぞれ七十年ぶりでありましたけれども、地元でやる気のある方が働いて、そこで活力ができるような、そうしたものを後押ししてきたということもこれは事実であります。
 ですから、私自身、農林水産業、これから海外に輸出すべきだというふうに思っています。農林水産省に輸出本部ができましたけれども、これについても私は後押しをさせていただきました。
 いずれにしろ、日本の農林水産品というのは、非常においしくて、特にアジアにおいては大変な人気があるということでありますので、こうした農林水産品を海外に向けて輸出することができるようになって、地方の活力につながればいいなというふうに思っています。

○石川(香)委員 今いろいろお話しいただきましたけれども、やはり規制改革会議、いわゆる官邸直結の経済重視の政策と言われるものが多かったなと思いますけれども、今、輸出のお話もございました。
 菅総理は、御自身のお話をされるときに、御実家が秋田の農家ということでそういうお話をされますけれども、農家の出身の総理大臣ということで、非常に親しみを感じている方も多いとは思います。しかし、その割には、先日の所信表明の中では、この農業、農村のみならず、一次産業のことについてほとんど触れられておりませんでした。唯一触れられていたのが、先ほどお話しなさった輸出五兆円の話。
 輸出の大切さはもちろん否定はしませんけれども、果たしてそれだけでしょうか。もっと大事なことがありますよね。例えば、この三十年間で若手の農業者が百万人減っていると言われています。自給率も先進国の中で最低基準です。コロナの中で、やはり自国で食べ物を供給していくという大切さも痛感したと思います。そういう重要なことがあるにもかかわらず、それしかなかったというのは、非常にがっかりしたなと思います。
 そもそも、菅総理が、農業、農村のみならず、地方に対してしっかり目を向けてくださっているのかということについて、過去の発信や発言を含めて、少し私は疑問に感じておるところがありますので、フリップを出していただいて少し御紹介したいと思います。
 以前、菅総理御自身のホームページの中で、私の目指す政治というところに、年功序列、地方優先政治の打破という主張をされておりました。少し内容を読みますと、皆さんの支払う国税の大部分は地方の道路や施設の投資に使われています、大都市はさまざまな都市問題を抱え、財政も火の車です、世界を探しても日本しかない地方交付税制度はもう見直さなければなりませんと書いております。
 また、平成十三年の衆議院の決算行政監視委員会の中では、こんな御質問もされています。地方交付税制度について、市町村によっては頼っているところが非常に多く、自分たちの負担とか受益はほとんど関係ない、地方自治団体の自立を阻害、甘えの構造をもたらしている大きな要因と発言をされていると思います。これは間違いなく地方切捨ての危険な発想だと思います。
 菅総理は、大学を卒業されてから、御自身の御実家をすぐに継ぐということに抵抗を感じて東京に就職に出たという話を御自身でされておりますけれども、恐らく想像をはるかに超える御苦労はあったかと思います。こうして総理大臣になられたというのは、本当にサクセスストーリーだと思うんです。今、選挙区も大都市ということもあるんでしょうけれども、心までもが全て都会に行ってしまったんだということであれば、ふるさとや地方の方はとてもがっかりするんじゃないでしょうか。
 ぜひ、きょうは、ふるさとや地方の方に対して思いやりを持った答弁をしていただけるものと信じて、次の質問に入りたいと思います。
 さて、大混乱を招いた高収益作物次期作支援交付金についてお伺いをしてまいります。
 流通がストップした影響を受けまして、生産者が丹精を込めた農畜産物が、在庫がたまり、そして価格が下落をしているということで、大変な大きな影響が出ています。長期的な影響というものも今後見ていかなくてはいけないと思います。
 そんな状況の中で、コロナでの影響にめげずに、営農を断念することがないように、次期作に前向きに取り組む農家の方に交付するということでつくったのがこの高収益作物次期作支援交付金でありました。これは、コロナの減収を問わずにということで、とにかく次に向けて投資をする人を後押しするという目的でありました。
 申請の締切りが終わりまして、その間、菅内閣も発足いたしました。十月の十二日、申請締切りから実に二カ月半以上たってから、突然の要件変更が起こりました。申請が終わった段階で、後から公募の要件が急に厳しくなったということで、もらえるはずだった交付金がもらえない、若しくはかなり減額をされるということで、計画が大幅に狂って、全国の農家の方から怒りの声、困惑の声が噴出しているという問題です。
 まず、農水大臣にお伺いします。なぜ要件変更を行ったんでしょうか。